WAC・深田萌絵事件サマリー(3) - 新型コロナウイルス騒動・外務副大臣脅迫被害疑惑騒動

2021-01-17

目次

【第1編】
はじめに
登場人物・組織
1. ファーウェイ工作被害疑惑事件(1)
2. シャープ買収騒動
3. JSF事件へ

【第2編】
4. JSF事件
5. ファーウェイ工作被害疑惑事件(2)
6. IRS事件
7. パナソニック軍事レーダー技術流出疑惑騒動
8. ネット掲示板殺害予告騒動

【第3編】

9. 小括

ここまでの深田氏らの主張を簡単にまとめると、自身が経営するRevatronのCTO后健慈氏はかつて中国科学院の顧問を務める傍ら新チームを率いてゼロから米軍向けの技術開発を行った「天才エンジニア」で、当時台湾で后健慈氏の2億元近いトンネリングを告発した焦佑鈞氏は秘密結社の首領で、開発していたF-35に関する技術はこのときに盗まれて中国の人民解放軍に流れてしまったという。

さらに、Revatronに対して1000万円の保証金の返還を求めている藤井一良氏も同じく秘密結社の構成員で、ファーウェイのスパイを兼ねている上に背乗りによって日本国籍を取得しており、福島原発事故の発生後、深田氏らはF-35の技術要求・仕様を満たす高度な耐放射線チップの技術を秘密裏に米国から日本へ移転していたが、これも藤井氏に詐取されて中国に流れてしまったという。

深田氏らが横須賀米軍基地を狙った秘密結社による核テロの計画を察知し、日本の捜査当局と連携してこれを追っていたところ、中国に抱き込まれた米IRSやFBIが后健慈氏らに対して脱税や国際犯罪への関与を疑いをかけるなどしてこれを妨害し始めたが、日本も与党・自民党の4分の1、外務省、裁判所の一部が中国に利益供与していることからこれを黙認しているという。

だが、后健慈氏の「天才エンジニア」らしい実績は確認できず、JSF計画への技術提供も「CPU周辺チップセットを提供する予定だった」という程度の縁だったようであるし、米国から技術移転したという耐放射線チップは技術仕様から見ても実在が疑わしく、Revatronがそれを用いて日本の政府機関と宇宙関連で共同開発を行っているという情報も確認できない。WiLLで披露した背乗りスパイの「証拠」も虚偽だった。

深田氏の主張からそうした要素を差し引くと、「后健慈氏のトンネリングを告発した焦佑鈞氏は秘密結社の首領で、保証金の返還を求めている藤井一良氏も同じく秘密結社の構成員で、脱税や国際犯罪への関与を疑う米IRSやFBIは中国に抱き込まれており、自分たちを日本政府が守らないのも政府や裁判所が中国に配慮しているからだ」ということになるが、秘密結社が凡庸なエンジニアを狙う理由が見えてこない。

后健慈氏が体調不良を理由に米国に帰国したあとも深田氏は秘密結社の陰謀の追求を続けているが、事件の中心にいたはずの后健慈氏の消息についてはほとんど語られなくなり、新たに公開された人物相関図ではRevatronごと姿を消してしまった。核テロ計画と関わりがあると主張していた裁判の進展についても2020年11月現在に至るまで報告らしい報告も行われていないようである。

大体このあたりのことが事件の本筋と見られる。ここから先は補足情報として、后健慈氏がRevatronの取締役を辞任して深田氏が突然「スパイに技術を詐取された」と藤井氏に対して攻勢に転じる2014年から始まった秘密結社に関する言説、およびRevatronや后健慈氏についての言及が減ってからの秘密結社との「戦い」などを概観していくことにする。

10. 秘密結社と台湾民政府

深田氏がブログやSNSで事件について語り始めた2014年、台湾は国民党の馬英九政権だった。馬英九氏は后健慈氏がかつて台湾で「見せ金」増資の虚偽登記を行い、さらに焦佑鈞氏から海外の子会社を利用したトンネリングを告発された当時の台北市長で、深田氏によると后健慈氏が開発したCPU周辺チップセット「Articia P」の設計を中国に横流しした秘密結社・青幫の下部組織の首領だという。

当初、深田氏は后健慈氏が怨恨を抱いているらしい馬英九氏の政権運営に対して「青幇グループに所属しない一般市民の財産没収を行った」、「中国との貿易協定の強行採決に反対する学生たちに特殊部隊をけしかけて殺害を命じた」など、虚実入り交じりの批判を行っていたが、2016年の総統選で民進党の蔡英文氏が当選すると、今度は「蔡英文は青幫に寝返ったポイ」と言い、やはり同じような調子で批判を始めた。

2018年には「米IRSに対して脱税の通報を行ったのは実は台湾政府だった」とブログで明かされる。税務調査は2015年から始まっていたそうだから馬英九政権のときに通報が行われたことになるが、IRS事件に関してはすでに検証してきたように深田氏がほとんど資料を公開しておらず、「台湾政府が通報を行った」という情報についても真偽は定かではない。后健慈氏がトンネリングを告発されたのは2006年以前の出来事である。

10-1. 秘密結社によるプロパガンダ(1)

深田氏は松田政策研究所チャンネルの《日本のIT技術を守れ!深田萌絵さん再び登場》(対談:松田学・元衆議院議員)において次のような自説を展開している。
情報が完全にコントロールされているので青幫の情報が完全に出てこないんですよ。/台湾のネガティブなニュースって全然出てこないでしょ?それもそのはずで台湾にいる新聞記者たち、各国の新聞社があって台湾で現地のアシスタントを雇うわけじゃないですか。あれがほとんどその青幫の人間だったりするわけですよ。【4:16~】
こうした珍妙な自説の一方で、深田氏は「秘密結社が学校給食への麻薬混入に加担していると報じられた」のようにマスコミの情報を装って虚偽の風説を流布したり、中国寄りの論調で知られる旺旺集團傘下メディアの記事を引用して(時には脚色を加えて)台湾政府を批判したりと、マスコミの情報、あるいはその権威に頼っているように思える。

2017年9月、深田氏はブログで「ニュースによると、台湾は北朝鮮にとって世界四位の貿易相手」、「国連で北朝鮮の貿易相手国は経済制裁とか言ってませんでしたっけ?」、「それだけ親密になった理由は、やっぱり半導体です。/半導体製造過程でウエハーを作るのに必要な良質のグラファイトが北朝鮮で取れて、しかも、世界市場価格の5分の1くらいで買えるそうです」と書いている

深田氏がソースとして提示しているのはニュース番組ではなく「關鍵時刻」というトーク番組(談話性節目)で、番組では「北朝鮮が公開した画像にミサイル計画に転用可能なCNC工作機械が写っており、日本の専門家がその機械が台湾製だと指摘している」という話をしている。深田氏はそれがRevatronに対して保証金の返還を求めたり米IRSを通じて税務監査を行わせたりしているという秘密結社による不正輸出だと主張しているが、その根拠は明らかではない。

また深田氏は、北朝鮮の6度の核実験の強行に対して国連が経済制裁の強化を決定した2017年9月当時も台湾が北朝鮮にとって世界四位の貿易相手であるかのように書いているが、事実とは異なる。以下は深田氏がブログに貼っている番組のキャプチャー画像。



キャプター画像の字幕には「2016年第四大貿易夥伴」とある。深田氏がブログで問題にした2017年はどうかといえば、7月時点で貿易額は前年総額の10分の1程度にとどまっている。これは2016年の国連の北朝鮮に対する制裁措置を受けて、台湾も独自制裁として貿易を一部制限したためで、深田氏の記事の3日後には同月採択の国連の追加制裁に歩調を合わせて貿易の全面禁止を発表している

なお、ジェトロの統計資料によると、2016年の「世界第4位」というのは対北朝鮮輸入額で、韓国を含めると第5位。1位から順に中国(24億6,700万ドル/シェア81.8%)、韓国(6.1%)、インド(2.9%)、フィリピン(1.6%)、台湾(1,200万ドル/0.4%)。貿易総額では第11位(1,300万ドル/0.2%)。石炭を中心に海産物、繊維などを輸入し、油コークスやアスファルトなどを輸出していたようである。

また、深田氏はブログの別の記事で「台湾のニュースを見ていましたが、台湾には天然の炭疽菌を含む土壌が金門島にあり、その炭疽土を北朝鮮に売ってくれと頼まれて売ろうとしたら米国に止められてしまった。仕方がないので、炭疽菌の培養方法と培養の機材を北朝鮮に売ったようです」とも書いているが、これもソースとして提示されているのはニュース番組ではなく「驚爆新聞線」というトーク番組である。

番組では、2017年12月に「脱北した北朝鮮の兵士が炭疽菌の予防接種を受けていたか、過去に炭疽菌に感染したことがあった可能性がある」と報じられていたことを取り上げて、「北朝鮮の研究スピードは速いのは事実だが、第三者を通じて台湾の家畜研究中心に非公開の論文あるいはレポートを売ってもらえないか、コピーしてもらえないかと頼んだのではないか」という話をしている。

いつ、どの論文あるいはレポートが、どこを通して流れたのか、といったファクトベースの話ではなく、あくまで「北朝鮮が採りうる戦略」という話で、筆者が調べた限りでは、過去にそういったことが疑われる事件が起きていたという報道は確認できなかった。もっとも、炭疽菌の培養方法くらいであればネットで検索すれば出てくるようである。(cf. 国立感染研究所・炭疽検査マニュアル第3版

深田氏の記事に戻ると「炭疽土を北朝鮮に売ってくれと頼まれて売ろうとしたら米国に止められてしまった。仕方がないので、炭疽菌の培養方法と培養の機材を北朝鮮に売ったようです」とあるが、番組では「論文やレポートを売っても『どうして土壌を集めなければいけないのか』という警戒心から土壌の売買は拒否するだろう」といった話がされており、「培養の機材を売った」などという話は出てこない。

10-2. 秘密結社によるプロパガンダ(2)

深田萌絵@Fukadamoe
台湾政府にしてやられましたね。
「台湾は米国の味方、日本は中国の仲間」

台湾の半導体・反日プロパガンダ (245)
http://fukadamoe.blog.fc2.com/blog-entry-4241.html
深田氏はブログで以下の画像を提示し、「一見何の変哲もない発表ですが、これ、台湾の反日プロパガンダです。米中貿易戦争で半導体供給の鍵で各国が米国、中国のどちらの陣営かを発表しています。台湾とカナダは米国陣営。韓国、日本等は中国の陣営だと発表しています」と書いている。(米国に本部を置く法輪功系メディア・新唐人亞太台の記事《台半導體供應鏈質變 黃崇仁:不懼中共挖角人才》の動画からキャプチャした画像のようである)



深田氏によると上の画像は「台湾とカナダは米国陣営」ということを表しているそうだが、並んでいる国旗を見ればUSMCA(United States–Mexico–Canada Agreement )やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)がどのような協定かを知らなくても深田氏がおかしなことを言っていると気付くはずである。細かいことを言うと、深田氏は「半導体供給の」と誤訳しているが、画像には「半導體供應」(半導体のサプライチェーン)とある。

記事は「米中の貿易衝突が続くと、将来半導体のサプライチェーンは米国系のUSMCAと中国系のRCEPの2大システムの競争になるかもしれない。中国の半導体の国産化が加速するにつれて、台湾はさらに競争圧力に直面していくことになる。中国からのヘッドハンティングを防ぎ、ニッチな分野を掘り下げ、自主サプライチェーンを築くべきだ」という台湾経済研究院(民間のシンクタンク)の提言を紹介している。

RCEPの締結に向けて、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、ASEANが交渉を行っていることは反日プロパガンダでも何でもなく事実である。正確には2019年11月12日のこの記事の1週間前にインドが離脱を表明しており、2020年10月現在も交渉に復帰するか否かが注目されている。台湾がこの交渉に加わることができていない理由については以下の記事を参照。
台湾、WTOで「途上国」優遇放棄 中国との差訴え
台湾では16年に中国大陸と台湾が1つの国に属するという「一つの中国原則」を認めない蔡政権が発足。中国の外交圧力で断交が相次ぎ、友好国が17カ国まで減るなど国際社会での孤立の懸念が強まっている。中国は米の保護主義を批判し自由貿易を提唱する半面、WTOでは途上国と主張。蔡政権は国際協調を重視する姿勢とともに、中国との違いもアピールする狙いとみられる。

また蔡政権は中国の影響力が及ぶ東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への参加が難しくなるなか、日本が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)への加入に活路を求める。加入交渉に向け加盟国に開放的な態度を示す意図もある。
─ 日本経済新聞(2018年10月16日)
他にも例えば、日本で無色透明な飲料が話題になり、日台ハーフのYoutuberによる解説が台湾の蘋果日報で紹介された際、深田氏は「日本で透明な引力(原文ママ)が好まれるのは、日本人が変態で日本の暗黒社会に対する羞恥心の反映だからだという解説が台湾タブロイド紙蘋果日報のトップに」とFacebookで書いている

しかし、深田氏が引用している蘋果日報の《日人把有色飲料變透明 反映病態羞恥感》という記事を見ても、紹介されているYoutuberの動画を見ても、「日本人が変態で」などとは述べられておらず、「日本では職場などで色の付いた飲み物を机の上に置くと『プロではない』、『礼儀正しくない』と思われることがあり、そうしたことを避けたい心理を反映している」という解説がされている。

このように「台湾の秘密結社が反日プロパガンダを行っている」と主張している深田氏自身が台湾の名前を騙って日本を貶めるような情報を発信している例は少なくないように思う。「パナソニックが半導体事業の売却によって軍事技術を流出させようとしている」という誤情報にしても、結果的には台湾企業の信用と共に日本企業の信用を傷付けている。

その目的が何であるかについては全く検討もつかないが、すでに検証したシャープ買収騒動に関する言論などは深田氏のブログの「株の話」カテゴリに投稿されており、「元株アイドル」や「経済評論家」、「元証券会社勤務」などの肩書で活動している人物がそうした風評を広めるのはどこまで許容されるのか、という点では興味深い。



10-3. 台湾で有名人だったか

2017年4月、深田氏はCTOの后健慈氏から「台湾のテレビ見てたら、『日本で人気の雑誌が、戦後に青幇の末裔が幇主となって台湾で暗躍してる』詳細が書かれていて、その雑誌は一週間で売り切れたって大騒ぎだぞ!」と電話で聞いたそうで、「それってもしかして私が書いたWiLLの記事のことか」と考えたという。

同年11月、『月刊WiLL』2017年12月号に掲載された「北朝鮮の兵器開発に秘密結社が関わっている」という内容の記事が「台湾の方々」によって中国語に翻訳された際には、陳辰光氏(Cheng-Kuang Chen)から「一晩明けたら台湾で一番有名な日本人になったよ!」と連絡があったそうで、「英語版はCIAとFBIに渡り、台湾は大騒ぎになっているらしい」と深田氏は書いている。(翻訳を行った「台湾の方々」や陳辰光氏については第5項で詳しく述べる)

FBIやCIAが大衆雑誌から秘密結社の情報を入手するというのもにわかには信じがたいが、IRS事件での「自分たちは防衛省と連携して敵対国の諜報機関を調査している」、「日本の捜査当局と連携して秘密結社を追っている」という主張から察するに、「それらしいことをしている」という説明の材料として「渡った」のだろうか。だが、米国の裁判所は深田氏の言説を「陰謀論」として退けている。(前回サマリー参照)

いずれにせよ筆者が調べた限りでは、当時台湾や米国で深田氏の言説をめぐって大きな騒ぎになっていたという事実は確認できなかった。陳辰光氏の「台湾で一番有名な日本人になったよ」という言葉にしても、多少の誇張どころではなく、ほとんど冗談で言ったものとしか思えないが、深田氏は事実そうなったかのように語っている。

強いて言えば、2017年当時に台湾メディアで深田氏の言説を取り上げたものとして、日本人ジャーナリストの野嶋剛氏が非営利メディア「報導者」に寄稿した《蓮舫,日本政壇女傑的秘密》という記事が見つかったが、取り上げられているのはFBIやCIAに渡ったという『月刊WiLL』2017年12月号掲載記事ではなく、2017年3月号掲載の《蓮舫さん、あなたはいったい何者なの!?》である。

扱いも小さなもので、当時日本で二重国籍問題の追及を受けていた蓮舫氏の祖母・陳杏村氏の実像を探った記事の前段において「日本で陳杏村氏との関係から蓮舫氏を攻撃している言論」の一例として紹介されているに過ぎない。

野嶋氏によると、深田氏は記事のなかで「蓮舫氏は台湾国籍ではなく中国国籍を隠し持っているのではないか」といった主張を展開しており、その根拠の1つとして「祖母の陳杏村氏が秘密結社・青幫の構成員だった」ということを述べているらしい。以下、『月刊WiLL』に掲載された深田氏の記事から該当記述を抜き出す。
 陳杏村氏は台湾バナナ事件の中心人物というだけでなく、台湾では日本軍との癒着を疑われ、漢奸罪で起訴された過去もあります。/戦時中に日本軍高官と親しい関係にあり、「上海南洋煙草公司」、「英米煙草公司」を経営する権利を得、日本軍に二機の戦闘機まで寄贈している陳杏村氏は無罪放免となりました。
 蒋介石の時代の台湾で、漢奸罪で起訴されつつも無罪になる手立ては一つしかありません。/「青幇」に加盟するか、あるいはすでに加盟していたかです。台湾の裁判所は、陳杏村氏が「国民党の地下工作と関係があったという理由から無罪とした」そうですが、国民党政権内の青幇が担う地下工作に関係があったとすれば、陳杏村はすでに青幇の構成員であったと考えられます。
こういった言説の真相を解き明かすべく、野嶋氏は中央研究院近代史研究所の許雪姬氏にインタビューを行い、「陳杏村氏は『漢奸罪』で逮捕されたが、逮捕後に罪状が『戦争犯罪』に変わった」、「無罪判決の理由は『日本国民として日本人に協力していたのであって、国民の義務を果たしていたに過ぎず、犯罪の要件を満たさない』というものだった」などの回答を得ている。

野嶋氏は深田氏の記事に対して「像這樣子,幾乎是胡說八道的報導內容,卻是大喇喇地刊登在具有一定影響力的日本媒體上,而且還有不少人隨之起舞,令人相當驚訝」(こうしたほとんどでたらめな内容が一定の影響力を持つ日本メディアに掲載され、少なくない人たちがそれに踊っているのには驚かされる)との見解を述べ、のちに深田氏は蓮舫氏のファミリーヒストリーが書かれた野嶋氏の書籍を酷評している

なお、当時この二重国籍問題について、深田氏は他にも台北駐日経済文化代表処(台湾の日本における外交の窓口機関で、 実質的には大使館の役割を果たしている)に関する虚偽の情報を「らしいです」という伝聞調で流布し、日本の一部ネット民の間で混乱を招いていたようだが、こちらも台湾では特に話題になっておらず、后健慈氏の言うような「大騒ぎ」があったという事実は確認できなかった。(以下のまとめを参照)

【参考】
深田萌絵 500円 池田信夫ら が流布する「謝長廷駐日台湾代表の発言」にソースが見当たらない件。

10-4. 青幫について

JSF事件の検証情報をまとめた抄録のなかで秘密結社「青幫」について触れ、「組織そのものは確かに戦前から実在しているが、深田氏の話の中ではかなり脚色がされていて全く別の組織のような印象を受ける」と書いたが、大体ここまでで深田氏の「青幫」に関する言説がどのようなものかは分かっていただけたのではないかと思う。



2019年には『WiLL増刊号』《深田萌絵×和田政宗対談(1)スパイ防止法制定を急げ!》のなかで次のようなことを語っている。
(ファーウェイは)台湾と共に育ったんですよね。台湾の半導体シンジケート青幫と呼ばれている秘密結社と共に成長して、その当時は台湾の青幫ってCIAのアセットとして動いていたんですよ。理由は中国語もできる、英語もできる、日本語もできる、っていうことで。/ ところがその台湾の青幫がCIAのアセットとして築いていったネットワーク、海外のネットワークをさらにファーウェイが利用して各国に成長していった。/だから各国の情報機関と連携している。だからMOSADにもアクセスできるし、CIAにもアクセスもできるし、元テクノロジーオフィサーは元MI6なんです。【1:35】
(1)CIAが台湾人をアセットに使ったという理由について、深田氏は国家戦略研究所の[戦略セミナー](https://archive.vn/gypAi)では他にも「台湾人は日本式の教育を受けており、礼儀正しいが、中国人は非常にマナーが悪いので世界中に浸透する時にすぐばれてしまう」といった珍妙な説を展開しているが、「マナーが悪いこと」と「スパイがばれること」の因果関係がよく分からない。

(2)ファーウェイと各国の情報機関の連携について、Facebookでも「(英国が)ファーウェイのCTOにMI6の諜報員を入れてる」と書いているが、MI6は「中国政府と密接な関係にあるファーウェイの次世代高速通信システムに依存すれば、情報網を危機にさらす危険がある。とりわけ軍事関連の通信を傍受されれば、戦略が筒抜けとなって安全保障上の脅威となる」とファーウェイ製品の排除を訴えているようである

(3)「半導体シンジケート青幫」というような言説は深田氏を発信源とするものしか見つからない。自身が経営するRevatronのCTO后健慈氏のトンネリングを告発した焦佑鈞氏がその首領であり、解放軍総司令官顧問を務める一方で中国共産党を欺いて世界の監視システムを牛耳っていると深田氏は主張しているが、后健慈氏がトンネリングを告発されたこと以外は客観証拠が提示されていない。

深田氏の青幫に関する言説は、時おり紹介される台湾系米国人のAndy Chang氏(張繼昭)が日本人向けに発行している無料メルマガ「アンディチャンのAC通信」を下敷きにしたものと見られるが、張繼昭氏の説は1990年頃に台湾で起きた海軍汚職事件を根拠に「現在に至るまで海軍幹部も武器ブローカーも青幇の構成員である」と主張するもので、深田氏の説とは大きく異なる。

ところで、深田氏はブログやSNSなどで「AC通信」を転載する際などに張繼昭氏を「李登輝サポーターの台湾人記者」「台湾人ジャーナリスト」といった肩書で紹介しているが、張繼昭氏が自らそうした肩書を使って活動している様子は確認できない。前述の海軍汚職事件を考察した自著『拉法葉弊案的研究』の序文には次のようにある。
我相信讀者對於「拉法葉弊案」和「尹清楓謀殺案」都有或多或少的瞭解,也可能有各種不同的見解。過去很多資料當中,也有不同角度的報導,況且兩案都尙未破案,因此,綜合研究也難免發生錯誤。特別是筆者只是一個留美評論家而不是記者,所有的資料來源很有限,這些資料都是取材自十二年來的新聞報紙、網路資料,以及已出版的書籍。 所以,書中必然也有筆者不知情與疏忽的地方,故而在此特別聲明:如有取材與事實不符等謬誤,懇請讀者諒解。
概訳すると「読者はこの事件について多かれ少なかれ理解があるだろうし、本書と異なる見解を持っているかもしれない。多くの資料において異なる角度からの報道があり、また事件の真相が解明されていないことからも総合研究に誤りが出ることは避けられない。特に筆者は記者ではなく在米の評論家に過ぎず、情報源は新聞や書籍、ネット上の資料などに限られている。本文中に誤謬があるかもしれないが、ご了承いただきたい」とのことである。

著者プロフィールによると、張繼昭氏は1934年に台湾で生まれ、戦後米国に留学・帰化。地震関係の仕事をしていた。その後は在米台湾人向けメディアに読者投稿、「AC通信」を配信。2000年代にはメルマガで書き溜めたニュース評論をまとめた「台灣號」シリーズ、『拉法葉弊案的研究』を日本と台湾(中国語版)で出版(一部は自費出版)。2020年10月現在のメルマガ発行部数は361部。

国際俳句交流協会・会員の染川清美氏の『あるディアスポラの知識人による台湾独立運動 : 張継昭 (Andy Chang) と「台北俳句会」の事例をもとにして』という論考によると、台湾独立運動家であるらしいが、台湾ではほとんど活動しておらず、「日本人があまりにも台湾情勢について知らないことに驚かされ」たことことから日本人向けにメルマガを発行しているという。このあたりのことが「評論家」の自負につながっているのかもしれない。

同論考によると、 張継昭氏は米国で李登輝友の会の催しに協力したことはあるが、「李登輝は台湾独立に力を尽くさなかった」と見る立場だという。筆者もいくつかAC通信のバックナンバーに目を通してみたが、「李登輝サポーター」を思わせる記述は確認できず、むしろ「李登輝は中華民国の総統だったから中華民国を民主化したと自慢したのだ。だが中華民国は今でも独裁国である」との見解を述べている。同氏を「台湾民主化の父」とする一般的な見解と乖離している。

染川氏は「ただ一人、どこの台湾独立運動の団体にも属さず、独自の主張を展開する」張継昭氏が日本人を啓発・情宣の対象としていることに対し、引っかかりをおぼえながらも、『戦前の日本統治時代の台湾富裕層としての経験が、「忘れられぬ他者」日本を懐古し、脳裏に蘇えってくるのではないだろうか』と推察しているが、前述のような政府を倒すことありきの主張が日本でしか受け入れられなかっただけのように思えなくもない。

深田氏が引用したAC通信のいくつかの論考が早々と見透かされてしまっている様子を見ても、「外国人相手だからこそ通用しているのではないだろうか」という印象を受けるが、当人としては趣味的に無料メルマガでニュースの評論をしているだけで、まさかそれが「記者」や「ジャーナリスト」などの見に覚えのない肩書と共に壮大な事件の参考資料として紹介されているとは思っていないのではないだろうか。
亜細亜新聞CH YouTuber@asianews_ch
AC通信のアンディ・チャン氏、未だ蔡総統の学歴詐称を語る
真贋はLSE公式見解見れば分かる
We can be clear the records of LSE and of the University of London - the degree awarding body at the time - confirm that Dr Tsai was correctly awarded a PhD in Law in 1984
https://www.lse.ac.uk/News/Latest-news-from-LSE/2019/j-October-2019/LSE-statement-on-PhD-of-Dr-Tsai-Ing-wen

DODO@dododo
アンディチャン氏のミサイル記事の中に一番変なのは台湾は確かに「中研院」と「中科院 」があります、でも軍事常識が持ってる人はこのミスは絶対しません

台湾のミサイル製造開発は中科院です、中研院は別の研究
このミスは例えば:ビッグマックはケンタッキーの商品

非常識な軍事記事です
DODO@dododo
あと、アメリカのミサイルの件について、まだデマです

ゴンドウ@redpanderEn
軍事やITの方々から助走付けてビンタされるレベルですね。
http://fukadamoe.blog.fc2.com/blog-entry-4277.html

>台湾の海軍がTAVITACを使えばシステムをハッキングして台湾海軍の艦隻を動向をすべて把握できるのだ。

パソコンみたくネットに繋がってるわけじゃねーぞ。ハッキング言いたいだけやん( ˘•ω•˘ )です。
Ichiro@surfliao1
@Fukadamoe 30年前フランスが台湾に戦闘機を売ったから、アメリカ今の時点で慌ててF-16最新のVシリーズとアメリカ軍使ってるM1A2,PC3,PAC3ミサイルを台湾に販売すること?
キミの論点から怪しすぎる。なぜ親日の台湾にデマまで批判するでしょう?日本人じゃないですよね?

http://tokyoexpress.info/2019/08/30/%E7%B1%B3%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%80%81%E6%9C%80%E6%96%B0%E5%9E%8Bf-16-block-7072%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F%E3%82%9266%E6%A9%9F%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E3%81%AB%E5%A3%B2%E5%8D%B4/

10-5. 美國台灣政府

日テレNEWS / 日本テレビのニュース・速報@news24ntv
蔡総統 中国の干渉阻止へ「反浸透法」施行 https://www.news24.jp/articles/2020/01/15/10578818.html
TBS NEWS@tbs_news
台湾で「反浸透法」公布、中国政府は「悪法」と非難 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3880941.html
premium銀河@premium18343547
蔡英文の反浸透法は 中国共産党の浸透を防ぐスパイ防止法のようなものですが これは深田さんはどう見てますか?
深田萌絵@Fukadamoe
独立派が中国スパイ呼ばわりされて弾圧されてます。
2020年1月、台湾で国外の「敵対勢力」による選挙運動やロビー活動、政治献金、社会秩序の破壊、選挙に関連した虚偽情報の拡散などの活動を禁止する「反滲透法」(反浸透法)が施行されると、深田氏は「反浸透法で真の独立派が中国スパイ呼ばわりされて弾圧されている」と訴えている。「弾圧」を受けているという「真の独立派」の団体名は明らかにしておらず、調べてもそのような事実は確認できない。

深田氏は以前から「蒋介石の銅像の近くには思想監視員がいて、像の前を通り過ぎる際に敬礼を怠ると不敬罪で逮捕されることもある。蔡英文はその監視の撤廃を公約にしながらも果たしていない」というような突拍子もないことも語っているが、1987年の戒厳令解除から30余年が経過した台湾でそのような事実はなく、蔡英文総統の政治スタンスについては「穏健独立派」というのが一般的な見方だろう。
台湾ニュース@中央社フォーカス台湾@focustaiwanjapan
台東空港の蒋介石像、撤去される=「移行期の正義」専門委が要請 https://japan.cna.com.tw/news/asoc/201906150005.aspx 台東県の豊年空港に設置された蒋介石の銅像が15日、撤去された。同空港は、過去の国民党一党独裁政権の下で行われた人権侵害や真相究明などを目指す「移行期の正義促進委員会」の求めに応じたと説明している。
ところで、2017年に『月刊WiLL』掲載の深田氏の記事を中国語に翻訳した「台湾の方々」とは何者だったのだろうか。記事を翻訳した「王豐琢氏」、その翻訳記事をFacebookのいくつかのコミュニティで拡散していた蔡明法氏(Nieco Tsai)、そして深田氏の元に「台湾で一番有名な日本人になった」と連絡した陳辰光氏。3氏はロサンゼルスに総本部を置く政治団体「美國台灣政府」の主席および顧問のようである。

台湾でも「美國台灣政府」(「美國」は米国の中国語表記)の存在を知る人はおそらくそれほど多くないだろうから、まずその団体の大もととされる「台灣民政府」(以下、「民政府」)から簡単に説明する。
にゃあ ^._.^ 🐾 @改名してみた@kitoto_87
日本の人達は「台湾民政府」っていうカルトっぽい団体を知らないんだ…
台湾独立派と主張が似てる所もあるけど、本当の独立派にとっては迷惑な存在・・・・・・
日本の保守系に耳触りのいい事言ったりやったりしているけど、胡散臭い人達。
六衛府@yukin_done
台湾民政府について誤解されている方が多いのでツイートします。台湾民政府は2008年に林志昇によって設立された私的政治団体で、台湾国内で無効なIDカードや車のナンバープレートなどを売りつけており、林志昇夫妻は5月に詐欺、資金洗浄容疑で桃園地検に逮捕されています。
※年代新聞CH50

六衛府@yukin_done
靖国神社に団体で参拝に来ることから騙される右派が後を絶たないのですが、台湾ではただのカルト組織の扱いです。画像をご覧ください。捧げ持っているのは天皇旗です。天皇旗は聖上の御在所を示す旗で天皇陛下以外は使用できない旗で、非常に不敬な行為であることは右派なら知っておきたいところです。

六衛府@yukin_done
思想面でもおかしいのです。台湾の帰属先が未確定であることから、台湾は天皇陛下に帰属する(日本国ではない)と主張しているのです。台湾独立派の他団体とも激しく対立しています。林志昇が成功大学で講演したり、以前に台湾李登輝友の会の秘書長であったことから日本でも信用する人が後を絶ちません。

上の画像は、2018年、資金洗浄の容疑で検察署に移送される「民政府」発起人・林志昇氏(前列中央)とその妻(後列中央)で、こちらのニュースから引用されたもの。林志昇氏は保釈金3,000万元で保釈が認められたが、約1年後に自宅で転倒し、脳出血で死亡。2019年11月時点で「300人以上が詐欺の被害に遭い、犯罪所得は7億元を超えると見られる」、「妻を含むその他の6人については審理継続中」と報じられている

2011年頃から台湾では「民政府」が「ビザなしで米国に行ける」という「パスポート」を販売したり、「将来民政府で役職に就ける」という有料講習を開いたりしていることが報じられており、警察も詐欺と断定して注意喚起を行っている。(参考までに、2013年に台南市の警察が注意喚起のためにネットで公開した「民政府」のDM。「此寫詐騙DM,請大家提高警覺,以防受騙」と記されている)

日本でも2013年4月頃から「日本李登輝友の会」、同会の常任理事・林建良氏が編集長を務めるメルマガ「台湾の声」などが数度にわたって注意喚起を行っている。以下は当時の「台湾の声」からの抜粋。
 台湾に詳しいはずのある日本人が、台湾ではもう228事件の活動が行われていないと公言していた。その人は、3月に台湾へ行って、林志昇集団の関係者と会ってきたらしい。本誌でも報道したように、今年は「三月大虐殺を忘れるな」というテーマで、民進党や台聯の主席、蔡英文氏も参加したデモ行進が行われたのだ(3月1日配信「【現地レポート】再び228事件を起こしてはならない」)。林志昇集団は、このようにして、台湾人が台湾国の実現のために努力をしていないかのようなイメージを、その日本人に与えるのに成功した。/林志昇集団は、台湾の独立派の人々から金と勢力を奪い取り、それを利用して他の独立派の団体を中傷・攻撃し、独立派が団結して台湾をリードすることを阻害している。
 日本にとって台湾は生命線であるが、中国に呑み込まれたくない台湾人にとっては、日本や米国が命綱である。ところが、林志昇集団は、台湾と日本そして米国の間に入り込み、台独聯盟やFAPAの力を削ごうとしている。日本語の堪能な、黄恵瑛や陳辰光、あるいは、林志昇集団に協力する日本人が、台湾に興味を持つ日本人におかしな情報を吹き込んでいる。彼らがもし、このまま増殖し続ければ、日本と台湾の関係にとって大きなダメージを与えるかもしれない。
日本でもこうした注意喚起が始まると、「民政府」の「総理」蔡吉源氏はじめ、米国を拠点に活動していた副主席の蔡明法氏、「国務委員」陳辰光氏、「国策委員」王豐琢氏などの幹部が「林志昇氏の独裁だった」と全責任を押し付けるような形で袂を分かち、新たに「美國台灣政府」を設立。「民政府」に対して「中共と共謀して独立運動を麻痺させている」と批判を始めた。

もう少し細かい話をすると「美國台灣政府」側は「自分たちは脱退していない。林志昇氏を追放したのだ」と主張しているようで、「民政府」から「美國台灣政府」へのIDカードの切り替えも無料で行えるようである。また同時期に「民政府」から分派した団体として他にも「大日本人民救援委員會」(以下の動画参照)があるが、やはり大もとの「民政府」に比べると認知度は高くないように思う。



深田氏が美國台灣政府の3氏とつながった経緯は定かではないが、とりわけ陳辰光氏とは親交があるらしく、Facebookで「台湾の未来を憂うチェンさん」と度々紹介されているほか、杉田水脈氏からアドバイスを受けて「慰安婦団体が中国の技術窃盗に協力している」とスピーチする予定だったというGAHT主催の国連パラレルイベント(前回サマリー参照)の動画撮影および公開にも関わっている節がある

参考までに「美國台灣政府」の主張の一部をFacebookから転載しておく。繰り返しになるが、本稿で政治イデオロギーの善悪などについて論じるつもりはないので、あくまで同団体がそうした主張を行っているという事実としてのみ紹介する。
日本人受辱70年,被違反海牙的無差別、原子彈攻擊,沒有得到任何賠償;/日本國最痛恨的國家,應該是美國。但日本國連說都不敢說,還被逼著跟美國軍事同盟。/日本國還要繼續做卒仔?/日本國撤廢麥克阿瑟憲法,箭在弦上。日本國在慢一點,我們大日本帝國重建政府就先發了!
《日本人は70年の屈辱を受けている。ハーグ条約に違反する無差別の原爆攻撃を受け、一切の賠償を得られなかった。/日本国にとって最も憎い国は米国のはずだが、米国との軍事同盟を強要され、それを言い出そうともしない。/日本国はこのまま意気地なしを演じるのか?/マッカーサー憲法撤廃の矢はつがえられた。日本国がこれ以上時間をかけるなら、我々大日本帝国が政府を再建し、その矢を放とう。》

2014年には100人を超える構成員が台湾省政府庁舎(当時)を占拠し、主席の蔡明法氏と「総理」蔡吉源氏が不法侵入で起訴されている。その後は特に目立った活動は無かったようだが、2019年、蔡吉源氏が「臨時総統」として20数人の構成員と共に再び同建物前に現れたことが報じられている。事前申請のない集会だったことから解散を命じられたようである。(以下は2014年の建物占拠時の強制排除を伝える報道)



少し冗長になってしまったが、深田氏の言う「弾圧を受けている真の独立派」が仮に「美國台灣政府」や「民政府」を指しているのであれば、彼らが問われている(問われていた)のは資金洗浄や不法侵入などの罪であるし、彼ら自身も「反浸透法でスパイとして弾圧を受けている」というような声明は出していないようである、というのが結論である。

11. 新型コロナウイルス騒動

2014年からブログやSNSなどで事件について発言を始めた深田氏は、2017年から『月刊WiLL』へ寄稿するようになり、国会議員の杉田水脈氏長尾たかし氏、杉並区議の小林ゆみ氏、中野区議の吉田康一郎氏らと親交を結ぶなど、一部界隈においてその存在を知られるようになっていった。(后健慈氏の身柄の保護などを行っていたという行橋市議の小坪しんや氏はWiLL以前からのファンのようである)
mei@mei98862477
深田萌絵さんがIT大臣なるべきですよね。この国のセーフティネットはガラパゴス。
竹内久美子@takeuchikumiffy
IT大臣に、ほんと深田さんがなってほしい!
原P~@harapi7056
深田萌絵さんとか 招集出来ないんですかね、デジタル庁へ🥺
青 拓美@aotakumi
@konotarogomame 防衛大臣離任式素晴らしかったです。行革担当大臣として、ぜひ深田萌絵氏をご注目いただきたい。IT安全保障での知見の蓄積の数冊出版。IT系技術防衛のために中国で孤立無援で裁判を戦い、極めて専門的な日本国益の発信者。私はただのファンですが、活用しないともったいない!
WiLLなどで見せる「中国の陰謀と戦うIT企業経営者」らしき言説は一部界隈において高く評価され、深田氏を国政に推す声まで見られるようになったが、そうした勇猛果敢なイメージとは裏腹に、自身が抱える保証金の返還をめぐる裁判については「弁護士が変わった」、「ストーカーが怖くて裁判の準備ができなかった」などの理由で2013年から7年以上も延期され続けた。

その間にも技術・権利・法律など各方面から事件の検証が進められ、何事かと裁判の傍聴に訪れる人たちも現れた。WiLL編集部は誌上では深田氏側に肩入れしながらも、深田氏の主張に対する疑義の問い合わせには黙殺を決め込み、『WiLL増刊号』の白川司編集長が、深田氏に保証金返還を求める藤井一良氏側に債務不履行が認められたかのような、実際の判決と異なる説明を行っただけのようであった。
藤井一良@fujikazu7
深田萌絵(本名:浅田麻衣子)さん、毎年毎年、裁判に関わった裁判官と書記官を全員を漏らさず忌避申立てするのはもう本当に本当にやめてください!
法を冒涜しています。
忌避申立制度はあなたのような裁判を引き伸ばす作戦に使われるものではありません!!!
本当にやめてください!!!
藤井一良@fujikazu7
弁護士が変わったという理由での延期はもう何回目なのか、思い出せないぐらいです。正直、「またかよ」と思います。

また、深田萌絵のいつものパターンだと、
弁護士が変わったの次は、「弁護士がやめたので本人訴訟に切り替えるので準備が必要」という理由に変わります。
藤井一良@fujikazu7
深田萌絵(浅田麻衣子)は、1000万円の返したくないから、
こうやって7年間も逃げ回っているわけです。
逃げているだけじゃなくて、様々なデマと誹謗中傷を吐きながら逃げ回っているのです!!!

本当に許せません!!!
Tsukasa Shirakawa(白川司)@lingualandjp
@chairtochair @WiLL_edit デマです。深田萌絵さんはお金は借りてません。深田さんの会社の製品を預ける対価として藤井一良氏から保証金として1000万円を預かりましたが、藤井氏がその製品を持ち逃げしたまま返していません。現在、藤井氏は持ち逃げを認めましたが、返却=損害金の支払いをしてないのです。
2020年、新型コロナウイルスのパンデミックのなかで深田氏が発信した台湾の防疫についての誤情報もまた小さな騒動を引き起こした。いくつかの現地メディアに取り上げられ、深田氏は「ね、台湾チンパン(青幫)に私、狙われてるって言ったでしょ?前からずーっと台湾メディアで叩かれているんですよ」と説明したが、前節で書いた通り、そういった事実は確認できなかった。

この節では台湾の防疫に関するものを中心に新型コロナウイルス禍での深田氏の発言の正確性や妥当性を検証する。あらかじめ書いておくと、筆者は「マスコミが報じない新型コロナウイルスの真実」のようなことを論じるつもりはない。各国の防疫政策を評価したり比較したりするつもりもない。(正直そもそもそういったことができるような知見を有していない)

検証1. ウイルス株を入手していたか

深田萌絵@Fukadamoe
台湾企業が12月末に武漢肺炎のワクチン開発に着手したニュースの話をしたら、何故私が嘘つきなのか。
武漢肺炎ウイルスの株を持たずにワクチン開発ができるのか?
私が嘘つきか、ワクチン開発が嘘か、ウイルス株なしにワクチンを開発する技術があるのか。

3つに1つだ。

https://www.fountmedia.io/article/49855
深田氏は台湾製薬大手・國光生技の董事長に対するインタビュー記事《武漢肺炎有疫苗可解? 董事長詹啟賢:國光生技去年12月底即開始研發...》から「台湾が12月時点でウイルス株を取得していた」と考えたようである。

まず、開発に着手した時期を記事から確認する。
「有關這次的冠狀病毒的疫苗,我們公司在12月底,那時候我注意到這個新聞的時候,我們就叫我們公司的研發單位開始處理這件事情,已經著手了,而且我們已經選定用什麼技術平台去做,已經從12月底、1月初就開始了」
《今回のコロナウイルスのワクチンに関しては、私たちの会社は12月末、私がこのニュースに気付いたときにR&D部門に対応を始めさせていて、すでに取り掛かっていました。どの技術プラットフォームを用いるかもすでに選定していました。12月末から1月の初めには始めていました。》

2019年12月30日、武漢の医師がグループチャットで「華南海鮮市場で7つのSARS症例が発生し、救急科で隔離されている」という情報を北京の検験所の解析結果とともに発信。別の医師もグループチャットで「コロナ感染性ウイルス肺炎の症例が見つかった。華南の周辺は隔離されるかもしれない」、「しばらく華南海鮮市場には近付いてはいけない」といった情報を発信。これらの情報がネット上で拡散されていった。(詳細はこちら

武漢の医師らが発信した情報は台湾最大のネット掲示板・PTTにも流れ着いた。台湾の疾病管制署(CDC)の報道官がSNSを通してPTTの投稿に気付いたのは12月31日未明のことだった。同報道官はネット上でさらに情報を収集し、投稿されていた検査報告に一定の信頼性があると判断。CDCの防疫グループに関連資料を送信し、朝のうちにCDCから中国に状況の問い合わせを行った。(詳細はこちら

同日、中国メディアは武漢で原因不明の肺炎患者が27人(うち7人は重体)が確認されていること、病院で隔離措置を取っていること、中央政府から武漢に専門家を派遣して調査中であることなどを報じた。16時前にはReuters共同通信もその現地報道を紹介している。台湾CDCは夕方に中国から報道内容と同様の回答を得て、入境者に対する発熱スクリーングを強化すること、武漢からの直行便に対して搭乗検疫を行うことなどを決定した

國光生技の董事長はこうした12月末のニュースから事態を重く見て、R&D部門にワクチン開発に向けた対応を指示した、ということなのだと思われる。

次に、深田氏は「私が嘘つきか、ワクチン開発が嘘か、ウイルス株なしにワクチンを開発する技術があるのか。3つに1つだ」とよく分からないことを言っているが、実は自分で引用しているインタビュー記事のなかにもその答えがはっきりと書かれている。
「現在一個新的技術叫做重組蛋白,不用病毒來製造疫苗,而是用一種跟病毒類似的免疫力,但沒有病毒的這種危險,這個技術,就是現在我們在做的」
《現在は組み換えタンパクという新技術があり、ウイルスを用いずにワクチンを製造することができます。ウイルスに似た免疫力を用いますが、ウイルスのような危険性はありません。私たちが今作っているのはこの技術です。》(注:インタビューは2020年2月に行われた)

同じく「組み換えタンパク」でのワクチン開発に取り組む塩野義製薬(UMNファーマ)のプレスリリースでは「遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与に供されます」と説明されている。以下は米国研究製薬工業協会の「ワクチンファクトブック2012」から作成した参考画像。



このように書くと「それでは12月末にウイルスの遺伝子情報を取得していたのではないか」という声が出てくるのかもしれないが、遺伝子情報であれウイルス株であれ、12月末の時点でそれが必要とされる工程まで開発が進んでいたと考えるのに十分な根拠を深田氏は提示していないし、現実にそのような「陰謀」があったとして、インタビューでわざわざそれを仄めかすような間抜けなことをする理由が分からない。

なお、2020年1月12日、WHOが「新型コロナウイルスの全塩基配列が中国当局によりGISAID(ゲノムデータ共有プラットフォーム)に登録された」といった告知をしている。つまりこの時点で世界中のラボや研究者がワクチンや検査キット開発に必要なウイルスの遺伝子情報にアクセス可能になっているようである。

日本の国立感染症研究所が中国、オーストラリアに続いてウイルス株の分離に成功したのは1月31日(台湾も同日)のことだが、その2日前にはすでに「ワクチンを創製・開発する動きが世界中で本格化している」、「グローバル大手の製薬企業や米国のワクチン企業などが開発に意欲を示すなど、日々参入企業が増えている状況」と報じられている。深田氏はこういった報道をどのように受け止めていたのだろうか。

検証2. WHOに何を報告したか

2020年4月10日、米国務省は「WHOが2020年1月14日の声明でヒトからヒトへの感染は確認されていないと発表したことに表れているように、台湾からの情報を公表しなかったことを(米国は)深く憂慮している」、「WHOがまたしても公衆衛生より政治を優先したと否定した」とWHOの初期対応を批判した。(詳細はこちら

一方、深田氏はFacebookで「WHOは中国の顔を立てて発表しないのは分かり切っていること。日台議連で日本政府に報告することもできたろうし、今年の二月に次期副総統がトランプと食事しているわけです。そんなコネがあれば、事前に知らせられるでしょう」と述べている。「台湾はWHOには報告していたのに日米両政府には2月になっても知らせなかった、実情を知りながら隠蔽していた」ということらしい。

では、台湾は2019年12月31日にWHOへどのような報告をしていたのだろうか。米国務省から「台湾から早期に受けた通知を国際社会に示さなかった」と指摘を受けたWHOは「台湾からの通知にヒトからヒトへの感染について言及はなかった」と否定した。これに対し、台湾はWHOへ送っていたメールを公開して反論している。(以下はそのメール全文)
News resources today indicate that at least seven atypical pneumonia cases were reported in Wuhan, CHINA. Their health authorities replied to the media that the cases were believed not SARS; however the samples are still under examination, and cases have been isolated for treatment.

I would greatly appreciate it if you have relevant information to share with us.

Thank you very much in advance for your attention to this matter.

Best Regards,
《ニュースソースが伝えたところによると、中国の武漢で非定型の肺炎が少なくとも7例出ている。現地当局はSARSとは見られないとメディアに回答しているが、まだ検査中で、患者は隔離措置を受けている。》

台湾側の主張は、メールには「ヒトからヒトへの感染」という直接的な表現は含まれていないが、「非定型の肺炎」、「隔離措置」に言及しており、「どのような状況で隔離治療が必要なのかは言うまでもなく明らかだ」というもの。これに対してWHO側は迅速性よりも確実性を重視しており、もっと確かな疫学的根拠が示されなければ判断はできかねる、ということなのだろうと思われる。

1月20日に中国の専門家チームが「感染源と見られていた市場の閉鎖後も感染者が出ていること」、「国内の4、5省市、および国外での感染事例のほとんどが武漢に関係していること」、「医療スタッフが感染したこと」などから「ヒト-ヒト感染することが証明された」との見解を明らかにしたが、23日、WHOは「ヒト-ヒト感染は中国以外では確認されておらず、拡散は限定的だ」と、なおも慎重な姿勢を維持している

こうしたWHOの対応をどう評価すべきかという議論は別にして、台湾が行った報告の内容というのは前項で述べた2019年12月31日時点でReutersや共同通信などが伝えている内容に準じるものである。つまり深田氏の「台湾はWHOに知らせていたが、日米には知らせなかった」という言説に反して、事実は「台湾がWHOに報告した内容は日米でも公知の事実だった」ということになる。
いす@chairtochair
有本
「1月22-23日、直後に武漢封鎖
私、安倍総理の弟、岸信夫さんに会って
直前に岸さんを台湾当局が訪れ
目的は新型ウィルス対応もっとシビアにと、特に台湾WHO未加盟
WHOにもシビアな報告を上げてると、でも返事が無い
協力関係、国際社会で作って行きたいと」2020年4月2日
pic.twitter.com/KXn3iVx9PZ

検証3. 善意で医師団を送ったと報道されたか

深田萌絵@Fukadamoe
蔡英文が北京に善意を示して、武漢へ医師団を送ったと今年一月に報道されている。中国側は台湾調査団の受入れに同意。習近平は米CDCもWHOの調査団も拒否したのに。

このニュースを伝えて、何故私が嘘つき呼ばわりか。

#深田萌絵

https://www.rfi.fr/tw/%E4%B8%AD%E5%9C%8B/20200112-%E8%94%A1%E8%8B%B1%E6%96%87%E7%95%B6%E9%81%B8%E5%BE%8C%E5%8C%97%E4%BA%AC%E6%88%96%E5%96%84%E6%84%8F-%E7%BD%95%E8%A6%8B%E6%8E%A5%E5%8F%97%E5%8F%B0%E7%81%A3%E8%A1%9B%E7%94%9F%E5%9C%98%E8%B5%B4%E6%AD%A6%E6%BC%A2%E5%8B%98%E7%96%AB%E6%83%85
深田氏が引用しているのはフランスの国営メディア「RFI」が2020年1月11日に報じた《蔡英文當選北京或首善意 罕見接受台灣衛生團赴武漢勘疫情》(蔡英文が当選して北京が初めてかもしれない善意 珍しく台湾の衛生グループが武漢入りして流行状況を調査するのを受け入れた)という記事。つまり「蔡英文総統が善意を示して医師団を送った」は深田氏の誤訳で、「北京が善意を示して調査を受け入れた」が正しい。

台湾が調査を申し入れたのは1月6日。武漢当局が「肺炎患者59人に拡大した」と発表した翌日だった。11日に中国側から受け入れの回答があり、12日深夜に台湾の2名の専門家が現地入り。2日間にわたって武漢市の疾控中心や病院で意見交換や臨床観察を行った。16日、台湾は武漢の感染症危険レベルを2番目に高い「警戒」(Alert)に引き上げた。その日の夜に武漢当局から2例目の死亡が発表された

つまり、WHOの緊急事態宣言(1月30日)や武漢の都市封鎖宣言(1月23日)が出るよりもずっと早い段階、かつ感染源の1つとして疑われていた海鮮卸売市場などを行程に含まない臨床観察や意見交換程度の調査だった。

また、深田氏は4月11日のこのツイートで「習近平主席がWHOの調査団を拒否した」といったことを述べているが、実際には2月16日から24日まで9日間にわたってWHOと中国の合同専門家調査チームが北京や武漢などで調査を行っている。調査チームに複数の米国政府関係者が加わっていたことも報じられている

2月には「国際調査団受け入れに消極的」(Reuters)、5月には「国際調査を渋る中国」(WSJ)と報じられており、調査が十分に行われたのかについては別途検証が必要だと思われるが、本項の目的は深田氏の「WHOは調査を拒否されたのに台湾は調査を許可された」といった言説の検証であるから、「WHOも調査していた」、「WHOの調査と台湾の調査では性質が異なる」といった結論に留めておく。

検証4. 九二共識について

nono@japannewparty
@onoda_kimi なぜ対処が早いのか?
中国共産党と裏で繋がっているなら納得できる。
小野田紀美【参議院議員(岡山県選挙区)】@onoda_kimi
今の台湾の民進党政権は違うでしょう。中国共産党の脅威と常に向き合っているから危機管理が出来ているのだと私は思います。
深田萌絵@Fukadamoe
@onoda_kimi つながっています。
「一つの中国」を掲げた九二共識のメンバーが若き日の蔡英文総統です。
一月に中国政府の許可を取って武漢へ調査団を派遣して中国と協力しあってます。
中国はWHOとアメリカの調査団は拒否してますが台湾はOKです。
深田氏は「台湾が迅速に対応できたのは、そもそも中国とつながっているからだ」というようなことを述べているが、具体的な根拠については何ら説明しておらず、漠然と「九二共識」(92年コンセンサス)を提示するに留まっている。印象として言えば「九二共識」という言葉の意味や背景を理解していないのではないか思われる。以下は東京外国語大学の小笠原欣幸教授の用語解説(2012)より。
 「92年コンセンサス」は,1992年,中台双方の窓口機関の間での事務レベルの折衝過程で形成されたとされる。中国側はこれを「一つの中国原則を口頭で確認した合意」と解釈し,台湾の国民党は「一つの中国の中身についてそれぞれが(中華民国と中華人民共和国と)述べ合うことで合意した」と解釈している。 >中国側は中華民国の存在を認めていないので,江沢民時代はこの台湾側の解釈を否定してきたが,胡錦濤時代になって台湾側の解釈を否定も肯定もしない方針に切り替え,2005年以降の共産党と国民党との連携に道を開いた。/民進党の蔡英文主席は,合意文書が存在しないこと,中国が台湾側の解釈を公式に認めていないことを理由として,それは「存在しない」と主張した。
 「92年コンセンサス」がこの名称で呼ばれるようになったのは2000年以降であり,その解釈は中台双方のその時の力関係に左右される。日本のメディアの中には「92年コンセンサス」について中国側の解釈のみを紹介しているところがあるが,「それぞれが述べ合う」ことが台湾の対等へのこだわりであり,これを省略したのでは,中台間の政治的駆け引きも,江沢民政権と胡錦濤政権の対台湾政策の違いも見えなくなる。
台湾の対中交渉窓口機関・海峡交流基金会について、深田氏はBusiness Journalの記事のなかで「日本の経団連に相当するもの」と説明しているが、これも誤りである。海峡交流基金会は対中政策・業務を所管する行政院の大陸委員会から授権された半官半民の財団法人で、日本の経団連とは全く性質が異なる。(経団連に相当する台湾の経済団体としては工商協進会や三三会などが挙げられる)

1993年、台中双方の窓口機関トップによる会談(辜汪会談)がシンガポールで行われた際、当時国際法学者として経済貿易交渉の顧問を務めるなどしていた蔡英文氏は李登輝総統(当時)からの指名で英語通訳としてこれに同行。その後は大陸委員会の諮問委員を務め、「特殊な国と国の関係」(両国論/二国論)の起草に大きく関わった。以下は早稲田大学台湾研究所顧問・若林正丈名誉教授の『李登輝が残したコンテキスト―ポスト民主化期の「憲政改革」―』より。
 第3次台湾海峡危機後アメリカは,一方で中国の軍事動向に対して一定のヘッジの動きを見せるとともに,一方では中国との関係修復を急ぎ,台湾に対しては1995年李登輝訪米以来中断した中台対話(両者の窓口機関,台湾側海峡交流基金会と中国側海峡両岸関係協会のトップの会談)の再開の圧力をかけていた。
 李登輝はこれに応じて,1998年10月辜振甫海峡交流基金会理事長の訪中が実現していたが,その一方で予期される中国との政治接触に備えて「中華民国の主権国家としての地位強化」策を練っていた。李登輝は,国際法学者の蔡英文を座長として総統府内に研究グループを作り,「台湾が中華人民共和国の一部でないことを明らかにしていく方策」を検討させた。
 研究グループの報告は1999年5月には李登輝のもとに提出されていた。報告書の原文は公表されていないが,李登輝の総統退任後の回顧によれば,報告書は,その前書きの部分で,台湾海峡両岸の関係は「少なくとも特殊な国と国の関係」であると定位し,その理念を,改憲,法律修正,政府公文書の用語法の変更などによって漸進的に実現していくことを謳っていた。
1998年6月、米クリントン大統領は「三不政策」(①台湾独立不支持、②「二つの中国」や「一つの中国・一つの台湾」の不支持、③台湾の国連・国際機関加盟不支持)を表明。これに反発するように李登輝総統がドイツの国営放送「Deutsche Welle」のインタビューで「両国論」を公表したのが1999年7月のことである。こうして三度目の辜汪会談は中止になり、両岸関係は再び緊張状態となった。

深田氏が蔡英文氏を「九二共識のメンバー」としているのは、おそらく前述のように同氏が過去に辜汪会談に同行していたことからなのだろう。台湾では逸話程度にしか語られていない経歴のように思うが、仮にその事実を以て「九二共識のメンバー」という言い方が成り立つのだとしても、それは「メンバー自らが合意の存在を否定し、受け入れを拒否している」ということにしかならないのではないだろうか。

2019年1月、中国の習近平国家主席が九二共識を「両岸が一つの中国に属し、国家統一に向けて共に努める」という合意であるとして「一国二制度」による統一を訴えたのに対し、蔡英文総統は「我々は一貫して九二共識を認めていない。根本的な理由は北京当局が定義する九二共識が実は『一つの中国』、『一国二制度』だということにある」、「大多数の台湾の民意も『一国二制度』に断固反対している。これも『台灣共識』だ」と表明している
日本経済新聞 電子版@nikkei
台湾総統選をにらみ、「一つの中国」原則を認めずアメリカと軍事的なつながりを強める蔡英文政権に圧力をかける狙いか。中国が中国大陸から台湾への個人旅行を当面停止します。台湾の観光業が打撃を受けそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48020010R30C19A7FF1000
時事ドットコム(時事通信ニュース)@jijicom
台湾総統選で「一つの中国」原則を受け入れない民進党の蔡英文総統が再選されたことは、台湾統一へ圧力を強める中国の習近平国家主席の路線が裏目に出たことを示しました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020011100666
時事ドットコム(時事通信ニュース)@jijicom
中国外務省の耿爽副報道局長は、台湾総統選での蔡英文総統の再選に対し茂木敏充外相やポンペオ米国務長官らが祝意や歓迎を表す談話を発表したことについて「『一つの中国』原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」と反発するコメントを発表しました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020011200394
産経ニュース@Sankei_news
台湾人救出へチャーター機打診も中国から回答なし
https://www.sankei.com/world/news/200131/wor2001310029-n1.html

台湾が武漢からの台湾人救出のためチャーター機の派遣を打診しているものの、中国側の同意が得られず。蔡政権は中国が主張する「一つの中国」原則を認めておらず、当局間対話は途絶えている。
時事ドットコム(時事通信ニュース)@jijicom
新型コロナウイルスによる肺炎患者が増え続ける中国・武漢市から、邦人149人を乗せた日本政府のチャーター機の第3便が羽田空港に到着、10人がせきなどの症状を訴え、東京都内の病院に搬送されました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020013101221
時事ドットコム(時事通信ニュース)@jijicom
新型コロナウイルスによる肺炎の感染が広がる中国湖北省に留め置かれていた台湾人や中国人配偶者ら計247人が、中国側が手配したチャーター便で同省武漢を出発し、台湾に到着しました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020020400245
時事ドットコム(時事通信ニュース)@jijicom
18日に開催予定のWHO年次総会へのオブザーバー参加を希望する台湾をめぐり、国際社会で駆け引きが活発化しています。日米欧などが支持する一方、中国は「一つの中国」原則を主張して強硬に拒んでおり、参加が実現するかはなお不透明です。
日本経済新聞 電子版@nikkei
「『一つの中国』の原則に反する。違法で無効だ」。台湾のオブザーバー参加提案を中国の反対で認めなかったWHOの年次総会。台湾は「2350万人の台湾人の健康と人権を引き続き無視している」と強く反発しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66025270Q0A111C2000000
朝日新聞(asahi shimbun)@asahi
「一つの中国」か台湾人意識か 迷走する国民党の三重苦
https://www.asahi.com/articles/ASND74WHZNCRUHBI01H.html

検証5. マスク生産体制について

深田氏は「(台湾が)情報を中国共産党より先にファーウェイから得てた」とも述べているが、その根拠を提示しておらず、どのような「情報」であるかも説明していない。そもそも前項で取り上げた「台湾は九二共識で中国政府とつながっているから迅速な対応ができた」という主張との間でどのように整合性がとれるのかもさっぱり分からない。

印象としては「何らかの形で中国とつながっていて何らかの特別な情報を掴んでいたから対応できたのだ」という雛形があらかじめ用意されていて、どのような形でつながっているのか、どのような情報を掴んでいたのかといったことはおざなりに後付けしているように感じる。

例えば、2020年3月にはFacebookで「マスク製造機械を事前に用意して、マスク在庫見える化ソフトの準備に、時間がどれくらいかかるか冷静に計算してもらいたい」と訴えかけているが、台湾にマスク製造機械のメーカーが何社あるのか、受注から納品までに通常どれくらいの日数を要するのか、といったデータを明らかにして自分で試算してみせるわけでもない。

WACの出版物などから深田氏を「コンピュータ設計、チップ・ソリューション、AI高速処理設計を国内の大手企業に提供している」IT企業経営者と認識している視聴読者には幾分かもっともらしく聞こえるのかもしれないが、そういった肩書を一度外してみると、実は「何かマスクがすごいらしい。陰謀だ」程度の話しかしていないように思う。「冷静に計算」したい方のために少し参考情報を残しておくことにする。

まず、マスク在庫可視化システムは台湾最大のCivic Techコミュニティ「g0v」(零時政府)のメンバーが作成したもの。「Civic Tech」とは市民自身が、テクノロジーを活用して、行政サービスの問題や社会課題を解決する取り組みのこと。例えば日本で新型コロナウイルス感染症対策のためのデータ公開支援を行っている社団法人「Code for Japan」もそうしたCivic Techコミュニティの1つとして知られる。

台湾政府は1月31日からマスクの生産ラインを行政管理とし、2月から全国の「特約薬局」(健康保険が適用される指定薬局)で実名制によるマスクの販売を始めた。台湾の保険証は2004年からICカード化されており、「特約薬局」は処方箋が必要な薬に関する事務をICチップを通して行なっている。政府はこれを応用して1人あたりのマスクの購入枚数を週2枚までに制限したり、各薬局のマスクの在庫状況をリアルタイムで把握したりすることができた。

一方、「g0v」はマスクの買い占めを防ぐために市民ベースでマスク在庫を可視化するウェブサイトなどを作っていた。実名制の採用に伴って政府がマスクのリアルタイム在庫状況をオープンデータ(機械判読に適した形式で、営利・非営利に関わらず、無償で加工・編集・再配布等のできるデータ)として公開したことから、それを利用してより精度の高い情報提供が可能になった。(「Code for Japan」の関治之氏が「g0v」メンバーの話としてこちらに経緯を書いている)

マスクの増産にしても一朝一夕の結果ではない。生産ラインを24時間稼働させるために国防部(日本の防衛省に相当)はメーカーの要請に応じて予備役を含む軍人を派遣して協力していたが、深田氏が「マスク製造機械を事前に用意していた」と述べていた3月1日時点の生産量は1日あたり620万枚。依然として1人あたり週2枚(12歳以下は4枚)までしか購入できない状況が続いていた。

政府はWHOから緊急事態宣言が出された1月末に国内のマスク用工作機械メーカー2社に製造機械を60基発注。3月5日までにそれがすべて出荷されて、3月中旬には日産1,000万枚となった。さらに30基(そのほかに手術室マスク用の製造機械を2基)追加発注し、4月上旬には日産1,500万枚まで伸ばした。この頃から14日ごとに9枚購入できるようになり、海外発送も解禁された。(昭和女子大学現代ビジネス研究所の根橋玲子氏がこちらにまとめている)

ところで、台湾のマスク用工作機械メーカーの多くはすでに国外に移転しており、政府から発注を受けた国内の最大手2社のいずれも社員数20人にも満たない小規模な企業だった。機械の原材料と技術者の不足から最初の60基だけでも4~6ヶ月かかると懸念されていた。ところが3月20日までに追加発注分の32基を含む計92基を引き渡している。どうしてこのようなことが可能になったのだろうか。
急ピッチで進むマスク生産ライン製造 工作機械企業が組織を超えて協力
 マスク増産のため、政府は1月末、マスクの生産ライン60基の購入を決めた。60基の製造から引き渡しまでには、通常は4~6カ月はかかるとされる。だが政府の発表を受けて結成された「工作機械ナショナルチーム」は作業開始からわずか25日で引き渡しまで完了させた。60基は今月上旬から稼働を始めている。政府が先月下旬に追加購入した32基は、今月20日までの完成を目指している。
 ナショナルチームには政府系研究機関3機関や工作機械・部品工業同業公会(同業組合)に所属する企業20社以上が参加。100人を超える規模で製造を行い、組合会員だけでも延べ2000人以上が製造に協力している。
─ フォーカス台湾(2020年3月19日)
補足資料としてマスク関連のニュースをこちらに時系列で簡単にまとめておく。

検証6. 「新基建」の原資は何か

竹内久美子@takeuchikumiffy
@Fukadamoe 深田さん、三重県の亀山のシャープがマスクを作りだした件、よかったら解説してください。
深田萌絵@Fukadamoe
中国のマスク外交の一環です。
マスクを販売で一帯一路の5G諜報システムの資金に充てると、中国共産党の人が言ってました。
シャープがいくらで売ってるか知りませんが、中共が中国で横取りした日本のマスク工場のマスクは欧州で倍の値段なので儲かりまくりらしいです。
深田氏が「中国共産党の人」から聞いたところによると、中国は一帯一路の5G敷設のために「新基建」というファンドを作っており、その原資はシャープなどが販売するマスクや医療機器から得た利益であるという。深田氏はさらにここから「日本政府が配布したアベノマスクに対して批判の声が挙がったのは『新基建』のためにマスクや防護服を高値で大量に買わせたい中国にとって商売敵だったため」といった自説を展開している。

その後、WiLL増刊号《ソフトバンクが詰んでる件》では「新基建」の予算が50兆円であること、ソフトバンク会長兼社長の孫正義氏が「日本国内の諜報インフラ担当」であること、ソフトバンクがマスクや防護服、医療機器の販売を行っているのは「新基建」にありつくためであることなどが語られている。また「中国の通信事業者から聞いた」話として、マスクや医療器具、ワクチンや新薬の利益がファンドの原資に充てられるという情報が追加された。



ところが、「新基建」(日本では「新型インフラ」と訳されることもある)について少し調べてみると、どうやら深田氏がWiLLで語っている「一帯一路のための、マスクや医療器具などを原資にした、予算50兆円のファンド」という内容とは全く異なるものであるらしい。

例えば、以下はオーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院・Frank Jotzo教授のコラム《How Green is China’s Post-COVID-19 ‘New Infrastructure’ Stimulus Spending?》から抜粋。(日本語訳は自然エネルギー財団による)
 この「新型インフラ」というコンセプトは、元々、情報通信技術が中心だったが、その後、低炭素型の輸送機関やエネルギーにも範囲が広がっている。投資対象として挙げられているのは、5Gネットワーク、データセンター、人工知能、産業用IoT(モノのインターネット)、UHV(超高電圧)送電、高速鉄道、電気自動車充電インフラの7分野だ。/
 投資の大部分は、省レベル(省・直轄市・自治区)の地方財政に頼らざるを得ず、また金融機関からの融資も促すことになる。
 すでに多くの省・直轄市・自治区政府が投資計画を先ごろ更新し、「新型インフラ」プロジェクトを組み込んでいる。このうち23の省・直轄市・自治区が合わせて45兆8000億元(6兆5000億ドル)に上る複数年投資を計画している。この23の行政区で、中国のGDPの89%を占めており、残る行政区も加えると、合計51兆3,000億元(7兆3000億ドル)に達する見込みだ。
以下は日経ビジネスに掲載された対外経済貿易大学・西村友作教授の記事《中国、経済を「内需」拡大に戦略転換、主役は「地方」に》から。
 経済成長の柱の一つとして「政府活動報告」で掲げられているのが「内需拡大戦略」である。新型コロナウイルスの世界的な流行で外需が急速に冷え込む中、内需を拡大させて経済成長につなげる。その主役が「地方」になりそうだ。
 財政赤字の規模を前年より1兆元(約15兆円)増やすと同時に、緊急時の特別措置として感染症対策特別国債を1兆元発行。この2兆元すべてを「地方に回す」という。
 中国は広い。日本の約25倍の国土の中には、先進諸国とほぼ変わらぬ一面と前近代的な一面が併存している。1人当たりGRP(域内総生産)をみても、最も大きい北京と最も低い甘粛省の間には約4.5倍の差がある。中国国内にはまだまだ経済発展を必要としている地方が数多く存在する。/
 「政府活動報告」では、インフラ投資拡大の原資として、地方債の増発に言及した。具体的には、地方専項債(特別債)を前年比約70%増やし3.75兆元(約57兆円)調達する見通しとなっている。
WiLLが孫正義氏を「諜報インフラ担当」とみなしている理由は定かではないが、白川司編集長の言説に至ってはプロ野球球団・ソフトバンクホークスにまで及んでいる。曰く、同球団は「外国人」の王貞治氏を柱として設立された「在日外国人」の象徴で、本拠地に福岡が選ばれたのも孫正義氏の「野望」と関係する地に近いためだそうだが、王貞治氏はダイエー時代からの監督で、本拠地も当時から福岡のようである。

深田氏にしても、少なくともWiLLへの寄稿を始めた2017年まではソフトバンクのユーザーだったようであるし、ソフトバンクグループの出版社から投資関連書籍も出している。もっと言えば鴻海やAppleを自身の命を狙う秘密結社だと主張しながら自身はiPhoneを使っていたり、LINEを「スパイ企業」「公式スパイツール」だと主張しながらも自身はそれを連絡手段としていたり、といったことが疑問視されている。

おそらく最もよく知られているのは、WACから『日本のIT産業が中国に盗まれている』が出版される1ヶ月前にRevatron株式会社から中国SNS大手のテンセントや「中国5G通信メンバー」(社名は明記されていない)とのパートナーシップ契約締結のプレスリリースを出していることで、代表取締役の深田氏が自ら書いたという同プレスリリースには深田氏と后健慈氏がファーウェイの幹部と肩を並べた写真が掲載されている。

この指摘に対し、深田氏は「インド企業、米国企業、英国企業、中国企業、香港企業、シンガポール系ともやり取りしてます。それがおかしいですかね?」とコメントしているが、それが事実であれば、藤井一良氏に対する訴状《平成28年(ワ)11911号》にある「Revatron株式会社の開発者原告J氏(以下J氏)は米軍の仕事をしていた経緯から中国国家スパイの被害に遭い、FBI保護の下で中国企業との取引はお断りしてきた経緯がある」という記述と矛盾があるように思われる。

さらに「中国系の仕事はいつも通り雲散霧消してます。私は半年以上中国に行ってないので」ともコメントしているが、その3ヶ月後にはWiLL増刊号で「仕事の関係で香港と、陸路で深センに(行ってきた)」(0:26)と報告している。パートナーシップ契約を締結しながら「雲散霧消」させるのは不可解であるし、そもそもテンセント側から契約締結のプレスリリースが出ていないという指摘もある。(同プレスリリースの不可解な点はこちらに整理されている)

テンセントと言えば、2020年から5年間で5,000億元(約7兆7,500億円)の「新基建」関連投資を行うと発表しているはずだが、深田氏やWiLL編集部はどうして番組でこれについて言及しないのだろうか。

【参考】
ポンペオ国務長官から「信頼出来ない中国製アプリ」と名指しされたWeChatのテンセントと戦略的パートナーシップ契約を締結したRevatron(社長:深田萌絵)の目的は何ですか?

検証7. BBCはどのように報じていたか

深田萌絵@Fukadamoe
台湾政府批判した台湾人記者が、捜査令状もなくスマホ監視で盗聴と位置情報を取られて、台湾に帰らなくなったそうだ。

私もヤバいかも?

https://www.bbc.com/news/technology-52017993
深田氏が引用しているのはBBCの《Coronavirus: Under surveillance and confined at home in Taiwan》という英語記事で、中身を読むと「盗聴と位置情報を取られて帰らなくなった」などといったことは書かれておらず、「帰国すると検疫を理由に捜査令状もなく位置情報を追跡されるから帰国しないことにした」というような内容だと分かる。記事から該当する部分を以下に抜き出して翻訳する。
Paul Huang, a local freelance journalist who was working abroad, decided to not go back to Taiwan because of surveillance fears. "The government openly stated your phone will be digitally tracked to enforce quarantine - in the same way the authority usually tracks suspected criminals," he explained. "Except this time they don't have or need a court-issued warrant to spy on your phone. "You are being suspected of a crime by virtue of having travelled overseas."
《海外で仕事をしていた地元のフリージャーナリストPaul Huang氏は監視を恐れて台湾に戻らないことを決めた。「検疫実施のために通常容疑者を追跡するのに用いる方法で携帯をデジタル追跡すると政府が公然と明言した」、「通常なら裁判所が出した令状なしに携帯を監視することはできない」、「海外渡航を理由に容疑者扱いされる」。》

その後、深田氏は『月刊WiLL』2020年6月号でも「(BBCの取材に対し)台湾批判を行ったジャーナリストも、捜査令状なしにスマホ経由で位置情報の監視とスパイ行為を受けていたと答えた。しかも、スマホにはアプリすら必要ない」と書いているが、上で訳したように「位置情報の監視とスパイ行為を受けていた」などとは答えていない。

後段の「しかも、スマホにはアプリすら必要ない」に至っては何を問題にしているのかよく分からないが、もしかしたら深田氏は携帯電話の基本的な仕組みについて理解していないのかもしれない。参考になりそうな記事を提示しておく。
 新型コロナ対策に活用されるスマホの位置情報、プライバシーは守られているのか

 多くの地域では2020年5月時点でも不要不急の外出を自粛するよう求められており、特に13の特定警戒都道府県では、依然として人との接触を7~8割減らすことが求められている。そして外出自粛に向け人の動きを把握するための手段として、政府は2020年3月31日、携帯電話会社などに人の移動を統計的に集計したデータを提供するよう要請している。
そうした要請を受けてか、携帯電話各社は利用者の位置情報から人の動きを把握できるデータやツールを、政府や自治体などに提供する動きが広まっているようだ。/
 では一体、各社はこれらのデータをどうやって取得しているのかというと、その方法は大きく2つある。1つはスマートフォンのGPS等を使ってアプリから位置情報を取得する方法であり、各社が提供しているアプリ利用者の位置情報を取得、集計することで各地域での人口変動を把握している訳だ。
 そしてもう1つは基地局の位置情報である。携帯電話は基地局に接続して通信する仕組みなので、「どの端末がどこの基地局に接続しているか」を知れば利用者の大まかな位置を知ることができる。そこで基地局の接続データから利用者の情報を集めることで、人の流れを把握している訳だ。

─ マイナビニュース(2020年5月11日)
台湾は外出を禁じている宅内隔離・宅内検疫の対象者の追跡に「電子圍籬系統2.0」(電子フェンスシステム)を用いており、これは後者の方法を採用している。GPSを採用した「3.0」もすでに完成しているが、台湾ではまだコミュニティ内での爆発的な感染が見られていないため、2020年10月現在に至るまで国内ではリリースされておらず、国外へのソースコード公開に留まっている。(接触確認アプリ、健康管理アプリもまだ正式に運用されていない)

なお、2020年4月、行政院の資通安全處(サイバーセキュリティ局)が「米国、オーストラリア、スイス、イタリア、インドネシア、ベトナム、カタール、サウジアラビア、スリランカ、パラグアイなど、少なくとも10ヶ国が政府や通信業者に電子フェンスシステムを参考にしたいとの意向を伝えてきている」、「GPSを全面的に使用して追跡していると誤解されているが、GPSのような精確な位置情報は取得してない」表明している

例えば日本でも毎日新聞が《台湾 海外帰りの市民を「徹底隔離」 その内情は…GPSで監視、守らなければ360万円罰金も》という見出しで報じているが、日経ビジネスは「携帯電話基地局と隔離者との距離測位技術を使った在宅検疫隔離者追跡システム」と伝えている。このBBCの記事でも台湾の「Electronic fence」について「it uses existing phone signals to triangulate the owner's locations.」と説明されている。

集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号の乗客らの台湾寄港時の観光ルートを割り出す際にも基地局の位置情報が用いられた。基地局が過去のデータを保管していること、訪台外国人のスマホ電波も受信していることが意外だったのか、深田氏は「過去に遡ってデータが保存されているからこそトレースが可能なわけで、それは外国人でも台湾を訪れるだけでアプリをインストールすることもないままにスマホが監視されているということだ」と述べている

また、深田氏の『月刊WiLL』の同記事には「(BBCの同記事のなかで)台湾人学生が米国留学から一時帰国し、自宅で寝ている間にスマホの電池が切れただけで、自宅に警察が押し寄せられたことも報じられている」といった記述がある。再び原文に目を戻すと、「2人の警官がパトロールで部屋を訪れた」という話を脚色したものであることが分かる。記事から該当する部分を以下に抜き出して中段以降を翻訳する。
Milo Hsieh is an American University student living in Taiwan under quarantine. The BBC asked him to write this article after one of his tweets about having his movements tracked by a satellite-based system was widely shared.

I did not expect two police officers to come knocking at my door at 08:15 when I was still asleep in my bed on Sunday morning.

My phone briefly ran out of battery at 07:30, and in less than an hour, four different local administrative units had called. A patrol was dispatched to check my whereabouts. A text was sent notifying that the government had lost track of me, and warned me of potential arrest if I had broken quarantine.
《日曜日の朝、まだベッドで寝ていた8時15分に2人の警察官がドアをノックしてくるとは思ってもいなかった。私の携帯電話の電池が切れたのは7時30分で、1時間もしないうちに4つの異なる地方行政単位から電話がかかってきた。パトロールは私の居場所を確認するために派遣された。送られてきたテキストメールは、政府が私(の位置情報)を見失っており、仮に検疫を破った場合、逮捕の可能性があるという警告を知らせるものだった。》

なお、携帯電話の電池が切れたあとに電話をかけてきたという「local administrative units」(地方行政単位)はおそらく「里長」のことだと思われる。「里」は台湾で最小の行政区で、「里長」は住民の相談役を務める日本の「町内会長」のような役割を務めている。台湾の新型コロナウイルスに対する防疫政策では、検疫対象者に電話をかけたり食事を届けたりするといった業務も担っている。(参考記事はこちら

検証8. 東京都にソフトウェアを提供したか

深田萌絵@Fukadamoe
台湾が東京都に提供したソフトウェアって、台湾でコロナ統制のために使われてるGPSデータや通り過ぎた人のスマホ情報をBluetoothで取得するスパイアプリだったら嫌だな。
なんか、中国語のアプリを台湾語に訳したものらしいけど。それって大陸からきたものでは?
深田氏はFacebookでもITmediaの《台湾のIT大臣・唐鳳氏が東京都の新型コロナウイルス対策サイトに突如プルリク、界隈が騒然》という記事を引用した上で、「このアプリを使えば全ての情報が台湾経由で中国共産党に流れます」と書いているが、記事のなかには「東京都にソフトウェアを提供した」という話は書かれていない。

東京都が3月4日に開設した「東京都 新型コロナウイルス対策サイト」はCivic Techを推進する一般社団法人「Code for Japan」が東京都の委託を受けて開発したもので、ソースコードをGitHubというソースコード管理サイトで公開し、改善のためのコメントや修正提案(プルリクエスト)を受け付けるという、オープンソースの取り組みになっている。

深田氏が引用したITmediaの記事には、唐鳳氏がそのソースコードに対して言語選択画面の「繁字」という漢字表記を「繁字」にしてはどうかというプルリクを行った、ということが書かれているはずだが、深田氏は記事のどこにも書かれていない「中国語のアプリを台湾語に訳して東京都に提供した」という話をしている。

その後も深田氏はTwitterで「報道によると(唐鳳氏は)愛読書がマルクス経済学で、保守無政府主義者だそうですが・・・」と書いているが、引用されている民報の《【觀察站】擺脫黨國教育束縛的唐鳯,獨樹一格!》という記事には「她早年閱讀過自由主義、無政府主義、馬克思主義等理論」(若い頃に自由主義、不政府主義、マルクス主義などの理論を読んだことがある)としか書かれていない。

深田氏は以前から唐鳳氏について事実と異なる発言をしていたようで、2019年9月にはFacebookで「このプログラマーIT大臣は台湾で率先してファーウェイサーバーを政府利用推進してます。こんな中国のスパイを引き合いに出すな」と書いている。そもそも台湾は2014年の4G時代から通信インフラに中国製の設備を採用することを禁止しており、唐鳳氏自身もNIKKEI ASIAN REVIEWのインタビューで次のように語っている。
"There's no such thing as pure private companies in China. From the perspective of the PRC, the ruling party can change your leader whenever the situation is intense,/If you include them [China-linked companies] in the infrastructure then you have to be very careful every time you update the system, as that could make the network vulnerable to allowing a Trojan horse inside the system."
《「中国に純粋な私企業は存在しない。中華人民共和国の 視点では、情勢が差し迫ったときに支配政党はいつでも企業のトップを変えることができる。/インフラ設備に中国関連企業が入っていると、システムをアップデートする度に細心の注意を払わなければならなくなる。何故ならネットワークがさらに脆弱になり、システム内部にトロイの木馬が侵入するのを許してしまうからだ。」》

検証9. COCOAについて

深田萌絵@Fukadamoe
自民党のIT政策で、中国と同じ国民監視アプリを作って感染経路追跡をしようとしているけど、それ作る前に外出制限とか何もやってませんよね。
やるべきことやらずに中国が喜ぶことばかりやるとか順番が間違ってませんか。
国民の個人情報をリスクに晒さないでいただきたい。
深田萌絵@Fukadamoe
中国共産党が裏で喜んで推進してる「接触確認アプリ」の導入はやめて欲しいです。
拙著「量子コンピュータの衝撃」でも書いてますがこの手のアプリは民主主義を終わりに導きます。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200702/dom2007020002-n1.html
Sebastian@steward_fox
@Fukadamoe OSSで開発したの個人で
3月から政府と関係なく開発をしていて
個人を特定する情報も行動履歴も取ってません
単にAppleとGoogleの方針で偽物防止の為にトレーサーは国で1つと決まったので厚労省が採用したにすぎませんし中共は関わってませんが
何か特殊な情報源でもあるのですか?
Sebastian@steward_fox
おや……成程
ITビジネスアナリスト等と名乗ってる割にこちらの業界で聞かぬ名前だとは思っていましたが……

因みにこのアプリは僕は確実な情報源を持っていますが間違いなく中国共産党とは無関係ですよ
深田氏は厚生労働省が提供する接触確認アプリ「COCOA」に対してSNSで「中国がウイルス対策で作った人民監視アプリとなんでソックリなんですか?」「ファーウェイ絶賛の平井卓也議員による国民監視システム開発」と発言している。ところが自身が引用しているZAKZAKの記事《「接触確認アプリ」の導入どう増やす? 国内観光旅行での特典など…省庁横断的に検討すべきだ》では「位置情報を使用していないし、データの管理は個人端末で行い、情報は匿名という意味で、最も匿名性が高いタイプ」と説明されている。

深田氏は「Bluetoothで近くを通るだけです自分のスマホから情報取られます」、「国民に拒否権はあるんですかね?」とも述べているが、厚生労働省の資料を確認すると「個人情報や位置情報は取得せず、利用しない仕組み」とあり、アプリのインストールも任意となっている。深田氏はどのような「情報」を取得されると考えているのだろうか。また何をもって中国のアプリと「ソックリ」と言っているのだろうか。

COCOAのベースになったのは「COVID-19Radar」というオープンソースプロジェクト。日本マイクロソフトの廣瀬一海氏が協力を呼びかけ、200人以上がプロジェクトに無償で参加。廣瀬氏は過去に日本医師会総合政策研究機構で医療ソフトを開発していた経験から「医療に透明性は不可欠であり、透明性が担保されたアプリがあれば、他の国でも使ってもらえるのではないか」と考えたという。以下は廣瀬氏の言葉。
 実は初期の段階で、医療向けの個人情報を取らないのかという声をかけてきた企業もあったのですが、「一切個人情報を取るつもりはない」とお断りしていました。
 個人情報を取るようなアプリにすれば、企業から支援を得られたかもしれません。しかし、日本でのプライバシーに対する意識は世界的に見ても高いです。また、自分だったら個人情報が吸い上げられるようなアプリは使いたくありません。自分が嫌なものをつくって、世の中にばらまくはずがない。
 そのことをクリアにするために、開発過程から全て一貫してオープンに記録を残しているということが大事なのです。
─ Diamond Online(2020年6月20日)
少し調べてみた限りでは、深田氏は2018年頃からSNSやブログで「日本の情報セキュリティの危機は平井IT担当大臣から」「癌はIT担当大臣の平井卓也」と発言しており、『月刊WiLL』2020年8月号でも同氏について「日本のIT業界の赤化を推進していた中心人物」と語っているようだが、そもそも新型コロナ対策テックチーム事務局長として「COCOA」の責任者を務めているのは平将明・内閣府副大臣のようである。

平副大臣は「COCOA」のリリースから約2ヶ月後の2020年8月、「情報を取られて国に管理されるのではないか」といったセキュリティの面での懸念が同アプリのダウンロードの心理的なハードルになっているという意見に対し、次のような見解を示している。
 こんなにも誤解が広がっているのは、マスコミの責任が大きいと思う。COCOAのことを取り上げていただけるのはありがたいが、必ず最後に“プライバシーに対する懸念も…”とした後、“近隣諸国では…”と、日本とはフィロソフィーも個人情報の扱いも違う韓国や中国の事例を持ち出す。韓国はGPSの情報やクレジットカード利用歴も取っているし、中国に至っては街角の監視カメラで顔を認証するなどして封じ込めていることからもわかるように、もっと色々な情報を取っている。日本はそういうことは一切やっていない。ここの誤解を解いていくのが大変だ。
─ ABEMA TIMES(2020年8月25日)
Tsukasa Shirakawa(白川司)@lingualandjp
日本のIT担当大臣なのにスパイ中国企業のファーウェイを大絶賛し、スパイSNS企業のLINEによる納税に許可を出した平井卓也大臣に対する深田萌絵さんの怒り。
ファーウェイを追い出す前にIT担当大臣平井卓也を降ろせ(深田萌絵)
http://fukadamoe.blog.fc2.com/blog-entry-4048.html
【参考】
新型コロナ対策に奮闘するIT業界をデマで侮辱する自称ITビジネスアナリスト

検証10. 台湾メディアの報道(1)

深田萌絵@Fukadamoe
台湾は武漢ウイルスの株を昨年12月時点で取得して、新薬開発まで始めている。一月半ばに習近平の許可を得て武漢に調査団も派遣してる。
実情を知っていて当然なのに、情報を隠蔽して国際社会でアドバンテージを取るような真似は非人道的だ。
深田氏の「台湾は武漢ウイルスの株を昨年12月時点で取得していた」、「情報を隠蔽して国際社会でアドバンテージを取るような真似は非人道的だ」というツイートは台日コミュニティを中心に小さな話題となり、深田氏のツイートには数日にわたって抗議が寄せられた。2020年10月現在、深田氏のアカウントは凍結されており、正確なコメント数は確認できないが、筆者の記憶では数十件にのぼっていたように思う。

この騒動を最初に報じたのは寶島通訊で、Revatronが数度に渡って設立と解散を繰り返していること、藤井一良氏を中国のスパイと非難することで1000万円の債務の解決を図ろうとしていること、「IT企業を経営し、重要な設計技術を保有している」と言っているが、日本政府認可の特許や商標を1つも保有していないことなどが日本のネット民によって検証されていると紹介。記事は最後に「深田氏の信用度の判断は読者に委ねる」と結んだ。

次に報じたのはケーブルテレビ「年代新聞」の《1800年代晚報》という番組で、寶島通訊と同様、藤井氏との間にある債務問題について日本のネット民の批判を紹介したほか、Youtuber「放鬆兄弟奕寬」氏の「彼女の言論は誹謗中傷が多すぎる。人気作家で一定の知名度があるので、こうした発言はすべきではない」という意見を紹介し、キャスターは最後に「華人が嫌い、台湾人が嫌い、中国人が嫌いで、発言が非常に偏っているようです」と苦言を呈した。

あるネット民が年代新聞の報道を取り上げて「台湾ニュースはあなたのニュースを放送しています!あなたが台湾に来るとき、あなたは検察官によって逮捕されて投獄されるかもしれません!」とツイートすると、『WiLL増刊号』の白川司編集長はそれを引用し、何故か「台湾当局が、ツイッターで台湾批判した深田萌絵さんを逮捕するみたいなことを言っているそうだ」とツイートしているが、引用元ツイートでも番組中でも台湾当局の見解など紹介されていない。

さらに白川司編集長は1000万円の保証金の返還をめぐる藤井氏とのトラブルが年代新聞で紹介されたことに対し、「相手は『中国出身の日本人』のはずなのに、なぜか台湾のマスコミが批判するという不思議な構図」ともコメントしているが、これもミスリードで、いずれの台湾メディアも深田氏の債務問題について疑義を抱いている日本のネット民の意見を紹介しただけで、このトラブルについて批判は行っていない。

一方、渦中の深田氏といえば、誤情報についての弁明も無ければ債務をめぐる裁判の進展についての言及もなく、「台湾のテレビ局が呉思国(筆者注:藤井氏の中国語名)を庇い、深田萌絵を中国スパイ呼ばわり」と報道内容を歪曲し、「これが台湾浙江江蘇閥の闇」、「解放軍のFと維新のネット言論部隊と、台湾メディアとネット言論部隊がシンクロしてる」「台湾の言論兵と中国五毛党が連携している証拠」と意味不明な発言を繰り返しただけだった。

なお、ここで「維新の会」の名が挙げられているのは、同党の足立康史氏、過去同党に在籍していた橋下徹氏から「藤井氏が背乗りをしている」という主張の根拠の誤りを指摘され、『WiLL増刊号』の番組内容に対して「重大な人権侵害の疑いが強い」と強い批判を受けたことと関係があるものと思われる。(詳細は「深田萌絵氏の藤井一良氏に対する背乗りスパイ疑惑事件にWiLLはどう関わったか」

深田氏の「出生地情報で背乗りを見破った」という主張が現実に運用されている戸籍制度において成立しないというのは制度解釈の問題ではないため、党派に関わらず同様の指摘をするはずだが、深田氏と親交のある他党の政治家は皆一様に沈黙している。理由はおおよそ察しがつくが、WiLLが訂正も謝罪もせずに動画を放置するとも思っていなかったのかもしれない。

検証11. 台湾メディアの報道(2)

深田萌絵@Fukadamoe
台湾アップルデイリー🍎記者さん。
彼は台湾人客家だそうです。
「台湾は言論の自由がある国」
「だから、あなたみたいな発見は罰金(犯罪)だ」
だそうです。pic.twitter.com/ttCHHk5NIE
づんく@Parody!Project @dzunku1
@Fukadamoe アップルデイリーって読者層は誰ですか?マックのアップルとは無関係ですよね?
深田萌絵@Fukadamoe
@dzunku1 関係ないです。台湾香港の民主派タブロイド誌でしたが、オフィス放火されたりして、創業者が辞めてから変わりました。
毎日新聞@mainichi
香港警察は、民主派の香港紙「蘋果日報」などの創業者、黎智英氏や同紙幹部ら7人を国安法違反などの疑いで逮捕しました。黎氏は中国側に「香港を混乱させる反中分子の頭目」と批判されてきた人物です。
https://mainichi.jp/articles/20200810/k00/00m/030/143000c
最後に騒動を報じたのは蘋果日報(アップルデイリー)で、深田氏を批判するYoutuber「奕寬」氏と「客家」氏の動画をそれぞれ記事で紹介した。深田氏は「客家」氏の動画を編集して添付したツイートで「台湾アップルデイリー🍎記者さん」と言っているが、これは誤りで、単に動画が[記事](https://archive.vn/jabHr)で紹介されただけである。別のツイートでは「台湾新聞の台湾人客家記者さん」とも言っているが、こちらに至っては何をどう誤解したものなのか検討もつかない。

蘋果日報に対しては他にも「台湾香港のタブロイド紙でしたが、オフィス放火されたりして、創業者がやめてから変わりました」、「元々は民主派新聞でしたが、創業者が退いてからは方法が赤く染まったようです」とツイートしているが、その後8月には創業者と同紙幹部らがは香港国家安全維持法違反などの容疑で逮捕されている。以下は深田氏が『WiLL増刊号』で香港デモの「取材報告」を行った2019年9月の蘋果日報の誌面。



なお、深田氏が引用している「客家」氏の発言は、「台湾のコロナ対応が迅速なのは閣僚ポストを実力本位で分けているため」という記事に対する深田氏の「違います。諜報機関が強くて事前に情報を掴んで工作活動に使ってたからです。今回のコロナ対策宣伝活動もプロパガンダで、国内ではスマホによるGPS管理などで中国と同じ監視社会が進んでいます」というツイートを批判したもので、正確には以下のような発言である。
もし台湾が中国と同じように私たちを監視管理しているのならば、私は今どうやってYoutubeやFacebook、LINEなどのSNSを使っているっていうの?話すときはちゃんと証拠を揃えてから話そうね?証拠あんの?証拠。証拠あんの?証拠。 ちなみに台湾ではあなたのこういう発言は罰金ものなんだよ。台湾は今に至るまでずっと言論の自由はあるし、自由国家なんだよ。私たち人民はみんなそれを誇りに思ってるし。それなのにあなたはこんな風に台湾人を軽視するようなこと言ってさ。【2:11~】
実際に「客家」氏の言う通りに適用されるかどうかは別にして、この「罰金」というのは2003年のSARSの教訓から傳染病防治法に追加された第63条「散播有關傳染病流行疫情之謠言或不實訊息,足生損害於公眾或他人者,科新臺幣三百萬元以下罰金」(伝染病の流行状況に関する流言飛語および事実と異なる情報を散布し、公共や他者に損害を発生を与えた場合、300万元以下の罰金の科す)のことを指しているものと思われる。

この罰則に対し、WiLL増刊号の白川司編集長は「台湾は中国とは違って民主国家だと思っていたが、実は権力を批判する自由がないと驚愕した」という感想を持ったという。筆者個人の経験では特に不自由を感じたことはないが、他国の自由度に関する知見が無いので世界的に見てどの程度なのかはよく分からない。例えば1つの指標として、2020年度の世界報道自由度ランキングでは43位のようである。

もっとも、台湾で強権的な防疫体制が採られていることは事実なので、参考までに、そうした体制が採られるように至った経緯について、2020年2月26日に産経新聞が陳建仁副総統に対して行ったインタビューを以下に引用する。SARSが流行した当時、同氏は行政院衛生署(現・衛生福利部。日本の厚生労働省に相当)の署長を務めていた。
問:台湾でSARSが流行していた時、どのような経験が学びとしてありましたか。例えば、「伝染病予防・治療法」の改正といった点で、他国との間で状況のちがいはありますか。

副総統:SARSが流行し始めた時、台湾の「伝染病予防・治療法」は、確かに古い法律で、新しい伝染病の予防・治療の適切なよりどころとは言えませんでした。例えば、患者を在宅隔離にするにも、法律に規定がないため、なぜ在宅隔離を強制できるのかとなりましたし、入国する旅客に健康調査票を書いてもらったり、体温を測ってもらったり、体温が高ければ検査を受けてもらったりするのも、彼らが嫌だと言えば、それに対処する法律がなかったのです。中央政府がマスクは不要と言っても、地方政府がマスクは必要と言うなど、中央と地方の防疫対策の足並みの乱れも、法によって解決することができませんでした。SARSが流行していた時、私たちはいくつかの病院を感染症指定病院として独立させようとしましたが、病院がそれを望まない場合、政府は執行する法的根拠を持たなかったのです。
 私たちは当時の「伝染病予防・治療法」が十分に厳格ではないことに気づきました。そこで、私たちは防疫の上で法の規定が必要と考えられる点について、「伝染病予防・治療法」の条文を整え、フェイクニュースに関する罰則も設けました。SARS 流行当時、多くのメディアは検証を経ずにある地区で患者が出たと書き立て、市民をパニックに陥れました。単なる発熱でSARSでない場合であってもです。この種のフェイクニュースは全体状況を憂慮すべきものに変えてしまいます。感染状況に関する情報は軽々しくばら撒かれるべきではないのです。こうしたことを規制するために、私たちは罰則を設けました。「伝染病予防・治療法」の全面改正後、新しい「伝染病予防・治療法」に依拠して、全国の伝染病予防・治療システムの立て直しに着手しました。

検証12. 騒動のきっかけは何だったか

Tsukasa Shirakawa(白川司)@lingualandjp
深田萌絵さんが台湾の暗部(中国共産党とのつながり)を指摘し始めたら、台湾人の一部が大バッシングを始めた。台湾もやっぱり怖い国だ。

https://tw.appledaily.com/international/20200411/VLZKQJDFASNEOMFRZ2PGN7JE6E/
さて、この騒動に対してWiLL増刊号の白川司編集長は「台湾の暗部(中国共産党とのつながり)を指摘し始めたら、台湾人の一部が大バッシングを始めた」とツイートしているが、「根拠のない言いがかりをつけられたことに対して抗議のコメントが寄せられた」と言った方がより実情に近いのではないかと思う。「台湾人の一部が」という言い方も不正確で、実際には日本の方たちも深田氏の誤情報を指摘していた。

深田氏もまた「中国スパイを批判したら、台湾のネット言論兵が飛び出してきて私を批判してます。台湾の言論兵と中国五毛党が連携している証拠です」とツイートし、その約2週間後に発売された『月刊WiLL』2020年6月号には深田氏の《台湾の紅いYouTuberからエゲツナイ攻撃》という記事が掲載された。記事には騒動のきっかけとして次のようなことが書かれている。
台湾四大媒体の一つ「蘋果日報」が、在日台湾人ユーチューバーの動画内容を記事に引用し、「(深田萌絵の台湾に関する話の)内容は支離滅裂すぎて、ち○こが爆発しそう」と、筆者が台湾に関するデマを流したかのような偏向報道を流したのがきっかけだった。台湾が国民をスマホ経由でGPS監視しているとツイートしたが、決してデマではない。
すでに述べたように「スマホ経由でGPS監視している」については誤報である。2020年10月現在も使用されている「電子フェンス2.0」はGPSを用いずにスマホから基地局に送信される電波だけを使って大まかな位置情報を把握するシステム。また「国民を監視」というのも不正確な表現で、位置情報を捕捉対象は外出を禁じられる在宅検疫・在宅隔離対象者である。

4月9日、Youtuber「客家」氏は自身の動画のなかで深田氏の「台湾は武漢ウイルスの株を昨年12月時点で取得して、新薬の開発まで始めている。一月半ばに習近平の許可を得て武漢に調査団も派遣している」というツイートを「台湾は昨年、一足先に習近平のところからウイルスの株を入手していた」と言い換えて説明していた。11日に蘋果日報は「客家」氏の発言をそのまま紹介した。

仮に深田氏がこのことに対して「『台湾は武漢ウイルスの株を昨年12月時点で取得』とは言ったが、『習近平のところから』とは言っていない。蘋果日報の偏向報道だ」と主張しているのであれば一理あるように思うが、もっともそれを「偏向報道」とまで言うのであれば、自身が発信した誤情報にいくつもの指摘が寄せられていることを省みず、潔白を装うような振る舞いも問題視されるべきだろう。

騒動のきっかけについては、4月6日には寶島通訊、8日には年代新聞がすでにこの騒動を取り上げており、9日の「客家」氏の動画でも11日の蘋果日報でもないことは明らかである。(2020年11月現在、深田氏のアカウントは凍結されており、当時のツイートのコメント数などを確認することはできないが、筆者の記憶では蘋果日報が取り上げた頃には騒動はすでに「下火」になっていたように思う)

4月6日 - 寶島通訊



4月6日 - 放鬆兄弟奕寬



4月8日 - 年代新聞《年代晚報 張雅琴說播批評》



4月8日 - 三原JAPAN Sanyuan_JAPAN



4月9日 - 客家與外省 Hakkaness&Outlander


【参考】 深田萌絵(浅田麻衣子)さんの台湾へのデマが酷くて、台湾人が怒り、台湾のメディアに取り上げられました。

12. 新刊レビュー荒らし被害疑惑騒動

深田萌絵@Fukadamoe
新刊に対するFと中華軍団からのAmazonレビューでの嫌がらせが始まりました。
皆さん、通報とレビューお願いしますm(._.)m

量子コンピュータの衝撃
2020年5月、Twitterでの新型コロナウイルス騒動から約1ヶ月後に深田氏の新刊『量子コンピュータの衝撃』(宝島社)が発売された。発売から2日後に深田氏は「Fと中華軍団からのAmazonレビューの嫌がらせが始まりました」と通報を呼びかけている。(「F」は深田氏に保証金1000万円の返還を求めている藤井一良氏を指すものと見られる。イニシャルを用いることで通報や訴訟を回避できるという考えなのかもしれないが、文脈から容易に特定できてしまう

深田氏はAmazonレビューでの「嫌がらせ」について、「組織的にやられています」とも訴えているが、「嫌がらせが始まりました」というツイートが投稿された5月16日時点で、星1つの低評価レビューは1件しか寄せられていなかったことが複数のユーザーによって確認されている。ちなみにそのほかは星5つが6件、星3つが1件だったようである。

星1つのレビューは東京大学先端科学技術研究センターで量子コンピューターのプログラマーを務める束野仁政氏が投稿したものであることが明らかになっている。レビューの内容は「量子コンピュータに関する誤った内容が多いため、一般の方にはオススメできません」として誤りの具体例を挙げたもの。星3つのレビューは「スマホの中身の本ならスマホ専門家が書いた本を読むべきだ」というもの。
つかの@「AWSではじめる量子コンピュータ」@snuffkin
誤った内容の量子コンピュータ情報が広まらないといいな、と思いつつAmazonのカスタマーレビューを書きました。
役に立った方がいらっしゃれば、リンク先の「役に立った」をクリックして頂ければと思います。
https://www.amazon.co.jp/-/en/gp/customer-reviews/R2HA0FHUPTBDKI/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4299003381
つかの@「AWSではじめる量子コンピュータ」@snuffkin
話の前提になっている量子コンピュータに関する記述が誤っているんですよね。誤った前提から帰結された結論にどんな意味が。。。
5つ星のレビューによると本文中に「1992年に『92コンセンサス』という協定が結ばれ、表では『一つの中国』で合意し、裏では人民解放軍軍事力強化のために『技術移転』のトンネルとなる密約まで交わしている」という記述があるそうだが、前節で述べたように深田氏の「九二共識」についての認識には誤りがあるし、ここまで検証してきた深田氏の台湾に関する情報を見る限り、「密約」というのも根拠があって書いているとは正直思えない。

なお、深田氏は以前から「GAFAは中国と不健全な関係にある。私のブログや書籍を検索結果から排除しようとしているのがその証左だ」というような主張をしており、『月刊WiLL』2019年4月号ではGoogleで「深田萌絵 IT」をワード検索すると「深田恭子」ばかり表示されること、Amazonで「深田萌絵」を検索すると「深田ナナ」というAV女優の商品が表示されることを「GAFAのチャイナ忖度」の例として挙げている。

ちなみに、2020年10月に筆者がGoogleとAmazonで検証を行った際にはどちらの事象も再現されなかった。これがGAFAと中国の関係がどのように変化したことを表しているのか、筆者にはさっぱり分からない。
深田萌絵@Fukadamoe
Googleが中国化している証拠ですが、『深田萌絵 IT』という検索で先日まで私の新刊「日本のIT産業が中国に盗まれている」が出てきたのに『深田恭子』に変わりました。

Googleは以前も中国🇨🇳の為に、『深田萌絵』を検索から排除しようとしました。

13. 外務副大臣脅迫被害疑惑騒動

深田萌絵@Fukadamoe
佐藤正久議員との対談予定でしたが、アンチからの嫌がらせで潰されました。
政治家を動かすのに国民による真摯な説明よりも、国籍を保持してるか分からない匿名のSNSが有効である現実です。
申込くださった皆様、参加出来なくなりました。すみません。


深田氏によると、2020年9月18日に予定されていた佐藤正久外務副大臣(同月16日で副大臣の任期終了)を中心にした勉強会「佐藤まさひさ安全保障塾」の第1回で深田氏は佐藤副大臣と対談を行う予定だったが、副大臣と秘書のSNSに人民解放軍のフロントから匿名アカウントを使った執拗な抗議があり、対談は中止になったという。(勉強会自体はそのまま開催されたようである)

これを受けて深田氏はTwitterで「匿名のSNSアカウントに脅されて逃げ出した佐藤副大臣。それで中国と闘えるんですか?それで防衛大臣として相応しいですか?」(元自衛官で防衛大臣政務官の経験があることからそうした憶測があったらしい)とアンケートを行い、5000人以上が投票。過半数が「相応しくない」と回答した。

ところが、佐藤副大臣の秘書・タカハシユキ氏は自身のFacebookに寄せられた事実確認の問い合わせに対し、「中止ではなく延期にいたしました。総裁選直後と内閣改造、国会開会と非常に国会が慌ただしく、ご迷惑になると思ったので。申し訳なく思っております」と国会情勢を見据えた上でのリスケジュールであったと説明している

また「人民解放軍のネット部隊から佐藤副大臣側に圧力があったのか」という問い合わせに対しては「なんの誤解があったのか。電話だけでなく、メッセージも残っているのですが。。。」と回答している。(理由は不明だが、事実確認の問い合わせとそれに対する回答が投稿されたタカハシユキ氏の記事は2020年10月現在閲覧できなくなっているようである)






この件に関して気になった点を3つ挙げる。

(1)深田氏によると、最初に勉強会で佐藤副大臣と対談を行うという話が自分の元に来たとき、「アンチが迷惑をかける」と断っていたが、佐藤副大臣の事務所との間に入っていた『WiLL増刊号』の白川司編集長から「先方はそれを了解した上でお願いしたいと言っている」と聞いたことから考え直し、「フライト調整があるから、返事は待ってほしい」と一時保留にしていたという。

ところが、保留の返事をしていたにも関わらず、勝手に深田氏の名前を使って参加者募集が始まっており、急遽フライトをキャンセルしてスケジュールを合わせなければいけなくなった。さらに佐藤副大臣側の都合で打ち合わせの日時を5回リスケジュールしたにも関わらず対談をキャンセルされ、「中国に謝罪して、私に謝罪なしという態度」をとられたことが深田氏の怒りの一端であるらしい。

調べてみると8月下旬にWiLL増刊号の白川司編集長とON THE BOARDの和田憲治代表がそれぞれSNSで勉強会の告知を数度行っているが、筆者がFacebookとTwitterでの告知を確認した限りでは、そのいずれにおいても深田氏が参加する旨は記載されていなかった。深田氏自身も対談の「中止」を明かすまで勉強会について言及していなかったように見える。

(2)深田氏によると、佐藤副大臣との対談予定であることを知った米国防総省に務める複数の知人から「防衛大臣になったときの彼の意見が聞きたい」と言われ、以下のような質問を預かっていたという。
1.宇宙軍の一つの機能として、中国からのサイバー攻撃をリアルタイムにモニターしている。日本の宇宙軍に対するストラテジーはどのようなものか。
2.中国が宇宙からの高出力レーザー兵器を発表している。設置された際に、日本はどのような形で防衛するのか。
3.中国がハイパワーZピンチ核兵器の開発を行なっているが、それに対して日本はどう対応するのか。
4.中国が国防動員法に基づいて日本を内部から制圧した場合にはどのように対応するのか。米国の暴動のように、武装勢力が突然現れた日本国内を制圧するシナリオを日本は持っているのか。
日本政府の公開情報から回答できる部分も多少あるのかもしれないが、こうした国防上の機密に関わる質問をわざわざ知人の民間人に託し、素性の知れない不特定多数のイベント参加者の前で公表させようというのは日米双方にとって全く不要なリスクで、話の流れが不自然に思える。単純に政府間でやり取りすればいいのではないだろうか。

(3)この騒動の最中、深田氏はFacebookで「(以前から仕事を潰されていて)WiLL以外のどこからも呼ばれなくなった」と自身の窮状を明かし、「応援してくださるなら、メルマガを登録してください」と呼びかけている。ウェブマガジン配信サービス「foomii」から深田氏の『世界とITのヤバい話』という有料メルマガ(880円/月)が配信されているらしい。

この呼びかけの2週間前に発売された幸福の科学の月刊女性誌『Are you happy?』(2020年10月号)には深田氏のインタビュー記事が掲載されており、その後もBusiness Journalへの寄稿が確認できることから、「WiLL以外のどこからも呼ばれなくなった」というわけでもなさそうだが、深田氏のWiLLに対する信頼感がこの言葉に表れているようで興味深い。

14. Twitterアカウント凍結騒動

深田萌絵 MoeFukada@MoeFukada
ツイッター本アカが凍結されました。
反都構想ツイートからです。
6.4万人フォロワー垢が凍結で、サブ垢は3600人フォロワーなので都構想阻止の拡散力が激減しました。
皆さん、都構想断固反対の方はフォローをお願いします。
皆さんのお力を貸してください!!
Tsukasa Shirakawa(白川司)@lingualandjp
深田萌絵さんのアカウントが凍結されたとか。維新を批判すると、なぜかいろんなアカウントから同じ文面で攻撃されて、最後は凍結される傾向がある。
2020年10月12日、深田氏のTwitterのアカウント「@Fukadamoe」が凍結された。その翌日から深田氏は別アカウント「@MoeFukada」でツイートを再開し、「大阪市の都構想に反対しているからアカウントを凍結された」というような主張を始めた。それから間もなくWiLL増刊号の白川司編集長もこの件に言及し、「維新批判すると、なぜかいろんなアカウントから同じ文面で攻撃されて、最後は凍結される傾向がある」とツイートしている。

一方、同じく『月刊WiLL』執筆陣の1人で、深田氏と親交があるエッセイスト・竹内久美子氏はTwitterで「これは維新の仕業ではありません。深田さんのトランプ大統領への返信が、トランプ大統領とアメリカ市民への『殺害予告』と誤解されたことにあります。トランプ大統領に近い方から教えてもらいました」とツイートしている。

アカウントが凍結される10日ほど前、深田氏はTwitterで多数のアカウントのリプライ欄に何の脈絡もなく自身の英語ブログ「Moet Fukada」のURLだけを投稿するという不可解な行為(参考画像)を繰り返し行っていた。トランプ大統領のリプライ欄に投稿した際には「Xi attempts murder Trump and the US citizen.」というコメントを残しており、それが竹内氏の言う「殺害予告と誤解された」「トランプ大統領への返信」を指しているものと思われる。

現職の大統領に近い人物からの情報が突然出てきたことは非常に興味深いが、深田氏が「私のアカウント凍結報告をした人達」というツイートで提示している違反報告の結果通知のスクリーンショットをよく見ると、「個人情報の投稿を禁止するルールに違反しています」と明記されている。つまり深田氏のアカウントが凍結された理由は特定の政党を批判したことでも殺害予告と誤解されたことでもなく、個人情報の投稿のようである。

ルール違反と見なされた深田氏のツイートを特定することはできないが、アカウント凍結の約1ヶ月前、佐藤議員との対談が「延期」になったことを知らされた深田氏はTwitterで藤井一良氏の個人情報を数度にわたって投稿しており、おそらくそれが原因ではないかと推測される。(2019年6月にアカウントがロックされた際も深田氏は藤井氏の身分証明書を投稿していた。「深田萌絵氏の藤井一良氏に対する背乗りスパイ疑惑事件にWiLLはどう関わったか」参照)

なお、深田氏はFacebookでは次のようにも書いている。
杉並区議会議員の維新某議員の入院している女性議員を「サボっているかのような印象操作」を行ない、かつ「校閲させなかった批判」を批判したら、ツイッターアカウントが凍結されました。
この現象は、橋下徹、足立康史が背乗り問題を隠蔽しようとした時にも発生しました。
恐らく、都構想投票前に私のアカウントを凍結する為に全力で通報したモノと思われます。
皆さん、維新の悪質で陰険な手口にご注意ください、
少し経緯を説明する。

10月8日、杉並区議会の小林ゆみ議員が長期病欠中に自著の出版(版元はWAC)を行ったことに対し、所属会派の自民党・無所属・維新クラブが「書籍の複数箇所に事実誤認が確認されるが、出版の事前報告も校閲依頼もなく、当会派は一切関与していない」、「病欠の申し出があってから連絡を交わしておらず、病欠で療養中と認識していた。公務を優先すべき公職の身として大変遺憾な行為」といった見解を明らかにし、会派として陳謝を行った。

その声明に「現在会派内で処分を含めて検討中」とあったことから、深田氏は「女性が病気を理由に休むことで辞職勧告運動はやめろ!」、「許すな!維新の女性虐め!」と維新単独会派による声明であるかのようにミスリードした上でこれを批判し、同区議会の中核派・ほらぐちともこ議員に賛同を求めるなどした。白川編集長も「杉並区には言論の自由がないようだ」、「杉並区は『言論には言論』でなく、欠席裁判で懲罰を与えるようです」と議会を批判した

一方、小林議員は「長期欠席している議会の開会中に自著を出版し、SNS上でその販促を行ったことは適切さを欠く行動だった」、「個人名や会派名を記載するにあたって、本人や当事者に事前確認せず、出版のことさえ伝えなかったことは礼を欠いていた」、「(書籍の内容に)複数の誤りを含んでおり、事前に各所に確認をしていなかったことを後悔している」として陳謝。会派側も「説明責任が果たされた」とそれを受け止めた。(以下は小林議員の声明から抜書)
 今回の病気欠席についても会派や議会には様々な配慮を頂き感謝していますが、図らずも主にSNS上で所属会派や議会全体について様々な憶測が為され、その結果、事実とは異なる内容について批判が起きたことについて、更に迷惑を増やしてしまい申し訳なく思っています。
 特に、女性だからこそ虐めや非難を受けたということは過去も含めてありません。
 今回の問題の本来の論点でもないため、そのような憶測が増幅した事には正直戸惑っています。
実はこの騒動にはもう少し続きがあり、行橋市議の小坪しんや氏によって明かされた内幕から察するに、どうやら戸惑っているのは小林議員1人だけではないようだが、小林議員と所属会派の和解はひとまず成立したようであるし、深田氏のアカウントが凍結された理由とは無関係のようだから本稿で詳しく追及することはしない。

なお、多数のアカウント宛てに重複した返信や一方的な返信を繰り返す「スパム行為」、アカウント凍結中に別のアカウントを利用して再開する「回避行為」もTwitterでは原則禁止されている行為であるということを念のために付け加えておく。

まとめにかえて

深田氏によると、藤井一良氏との裁判で弁護士に提出している資料は1700ページにも及ぶという。取引上の社会通念に照らして言えば、業務提携を中止した際の保証金の取り扱いなどは双方の間で事前に取り交わされた契約書に基づいて淡々と処理するだけの案件のように思うが、話を聞くと中国のファーウェイとつながりのある秘密結社が関係しているという長い前置きが始まる。

自社の「天才エンジニア」后健慈氏が秘密結社に技術を狙われて米国に亡命したという過去が唐突に説明されたかと思えば、国際社会や政治経済に関する時事的なトピックが取り上げられ、それらにも秘密結社が関わっているという衝撃的な「真実」が明かされる。情報が完全にコントロールされており、その「真実」を知るのはこの世界でも深田氏含むごく僅かな人物に限られているらしい。

こうして矢継ぎ早に明かされていく陰謀は興味深いものだが、情報源が不確かで虚実ないまぜになっており、それが少なくない混乱や騒動を招いている。誤りを指摘したり疑問を呈したりしてもまともに取り合わず、意図的にそういった情報を発信しているのではないかという印象さえ受ける。何よりそれらの陰謀が保証金の取り扱いに関する契約とどのように関わっているのかが一向に見えてこない。

そして、時おり訴訟を提起して「戦っている」らしきことが説明されるが、訴状が受理されたのかどうかも分からないような断片的な情報しか伝えていないものが少なくなく、米IRSとの裁判などは深田氏の説明を聞いただけでは何が争点になっているのか、誰が争っているのかも分からない。そうしたことが繰り返され、気付けば裁判の行方は有耶無耶になり、Revatronも后健慈氏も物語の中心から消えている。

2020年9月27日、深田氏はMediumで新たに開設したブログに《I have been Detained by the Japanese Police under Criminal Charges because I Unearthed a Chinese Spy Network》(私は中国のスパイ網を暴いたために訴追を受けて日本の警察に勾留されていた)という英語記事を投稿している。

記事には藤井一良氏を「中国スパイ」と呼んで東京の牛込署で名誉毀損の取り調べを受けたことやそれに対する不服が書かれており、「Now the Tokyo police are sending my case to Japan prosecutors for criminal indictment. This is Japan, a country that no longer is mine.」(現在東京の警察が私の事件を送検している。日本はもはや私の国ではない)と結んでいる。

深田氏が突然Mediumに投稿を始めた理由は定かではないが、その約1ヶ月前に同じMediumで「rescue_fujii」というアカウントが「浅田麻衣子(深田萌絵) 藤井一良平成25年(ワ)第31235号、平成27年(ワ)第2695号」「浅田麻衣子(深田萌絵) 藤井一良 1,000万円分割返済遅延時のやり取り内容(浅田麻衣子(深田萌絵) 藤井一良 1,000万円分割返済遅延時のやり取り内容)」という2本の記事を投稿していることと何か関係があるのかもしれない。

《平成25年(ワ)第31235号》はAlpha-IT temが2代目Revatronから債務名義を得るために起こした訴訟で、《平成27年(ワ)第2695号》は2代目Revatronが株主総会の決議により解散したことを受けて仮差押の効力が同一人格の3代目Revartonにも及ぶと主張したもの。返済遅延時のやり取りとして投稿されている内容は、かつて藤井氏公認で別サイトで公開されていた録音データ書き起こしと同じもののようである。

さて、Mediumの英語記事で深田氏が綴った「This is Japan, a country that no longer is mine.」が日本に対する決別のメッセージのようにも見えたことから、自身がCEOを務める米Tekliumの所在地・カリフォルニア州へ移住するのではないか、中国の義姉の元へ身を寄せるのではないかという憶測が流れたようだが、新型コロナウイルス禍の2020年11月現在、秘密結社に狙われながらも日本で講演活動を行っているようである。

Revatron株式会社に関しては、WACから『日本のIT産業が中国に盗まれている』が出版されて以降、現在に至るまでプレスリリースが出ておらず、同社の公式サイトやFacebookも更新されていない状態が続いているが、上述の講演の参加者が「Revatronの住所」と「同社の秘書の電話番号」の入った名刺を受け取ったことを明かしており、后健慈氏の帰国後に陥った「ワンオペ状態の個人事業」を脱することができたのかもしれない。

よく分からないのは、その名刺に記された「住所」がかつて同社の求人で見られた「東京都中央区銀座八丁目17番5号アイオス銀座402」でもなければ、2017年2月以前までの同社の登記情報で見られた「506」でもなく、2018年まで同社のプレスリリースなどで見られた「901」でもない「601」であることで、しかも講演の2ヶ月前には「中国人とチンピラが増えた」という理由で銀座から内神田に移転していたように思う。

后健慈氏や徐秀瑩氏はどうしているのだろうか。佐藤まさひさ外務副大臣との対談が「延期」になった際、深田氏は自身の有料メルマガの購読を呼びかけ、「執筆や講演から得られる微々たる収益は、仕事を潰され、殺されかけた彼ら(台湾人)の生活費や治療費のために使っています」と説明している。その「彼ら」のなかに后健慈氏や徐秀瑩氏が含まれているのだろうか。あるいはこれもまた別の慈善活動か何かなのだろうか。

思えば深田氏は大学在学中の2007年の秋、シンガポールに語学留学していた際にも、エージェントに騙されて不本意な低賃金で働かされているホームステイ先のフィリピン人メイドを救うために知り合いの弁護士、行政書士、アジア担当のジャーナリストに協力を求め、フィリピン大使館に掛け合うなど、人助けに奔走していたということを当時のブログ「萌絵的投資日記」で綴っている。

当時この件について読者やファンから「僕もカンパします」、「かかわり過ぎて、事件に巻き込まれないように」などの反響があったそうだが、このとき日本の外務省やフィリピン大使館に問い合わせを行い、金銭面での援助の取り付けに動いていたというファン(深田氏のブログで「奈美ちゃん」と呼ばれていた人物と見られる)は自身のブログで次のように述べている。
 萌絵さまから「将来テルマさんのような人を救う事業を起こしたいから誰か出資者を紹介してください」と言われて、友人の資産家の人達に相談したら何人かから慈善活動なら内容を聞いたうえできちんとしているなら出資の件は喜んで引き受けると快諾してくださり、そのうちの一人と萌絵さまと会合をしたのですが、その方がフィリピンメイドさんの住所を教えて欲しいといったのですが、萌絵さまが住所の場所を調べるので時間が欲しいと言う事でその会合は終わりました。
 後日その人からメールがあって「人の役に立つことなら資金を払うのは喜んで引き受けるよ。でも萌絵さんはプランもないしフィリピンメイドさんの住所もわからなければとても出資なんてできないよ。本当にそのフィリピンメイドさんっているの?MAHAOちゃん顔写真とか見た事あるの?あの後萌絵さんから僕の知人の出版社の人を紹介して欲しいって言うメールが来たんだよね。紹介するのは構わないんだけど、元々会った用件が違うし彼女なにかおかしくないかい?」と言われました。
 でもそんなはずは。萌絵さまは優しい人ですし、そんなわけ無いですと怒ったのですが、「だって会った時に調べたいから彼女の住所を聞かせてくれっていったのに、じゃあ住所を調べときますって言ったんだよ。変じゃない? だって自分がホームステイしていた住所を調べるって言って数日たってもわからないなんて不自然だよ。電話番号すらも。MAHAOちゃん注意した方が良いと思う」といわれました。萌絵さまは親切な方なのに・・・。
深田氏によると、最初に入学手続きで語学学校を訪れた際、受付で「貴女がくることを知りませんでした」と言われ、入学は可能でもホームステイ先に空きがないということで揉めていたところ、別の留学生を連れていた中華系の「おじさん」の豪邸にホームステイさせてもらえることになって事なきを得たという経緯があるそうだから、卒業後に連絡先を紛失して調べようがなかったのかもしれない。カメラも壊れてしまったという。

ところで、深田氏がシンガポールで語学留学していた2007年、のちにビジネスパートナーとなる后健慈氏といえば米国でRevatron.Incを設立していた。そのRevatron.Incに投資を行っていたベンチャー投資企業DGL Group Incの本社がシンガポールにあるというのも面白い縁である。DGL Groupは日本のRevatronにも投資を行っているようで、深田氏から一方的に「殺害予告を行った」と疑いをかけられているZF氏は次のように考察している
 私が考察した限りでは、日本のRevatron社には何ら見るべきものがありそうに無いので何を考えて投資したのか、よくわからない。また、上述したように米Revatron Inc.は1年未満で閉鎖されているから、この分の投資は蒸発したということになる。
 さらに、DGL Group は、R&Dセンターだったはずの米Revatron Incが閉鎖された後の日本のRevatronに、なぜ、いつ投資したのか。日本のRevatronも何度もスクラップ&ビルドされているようだから、時期によってはこの投資も蒸発した気配がある。
 関連会社である米Teklium社まで視野を広げても、どこに投資する価値があるのかよくわからない。
なお、DGL Groupからの投資については前述の「浅田麻衣子(深田萌絵) 藤井一良 1,000万円分割返済遅延時のやり取り内容(浅田麻衣子(深田萌絵) 藤井一良 1,000万円分割返済遅延時のやり取り内容」でも言及されている。深田氏がこのやり取りの録音記録をディープフェイクによる捏造と主張としていることについては第1節ですでに述べたが、このあたりの内容まで含めて捏造ということなのかどうかは定かではない。

后健慈氏との出会いやRevatron設立までの経緯についての説明も要領を得ない。Barclays Capitalを退職して2009年11月に失業手当の給付申請のためにハローワークを訪れたそうだが、申請の4日後には「役員会議」に出席し、さらにその3日後には生まれて初めてのコンサルタントの仕事をやり遂げたとブログで報告している。独立起業していたものと思われるが、社名も実績も公表されていない。

2010年1月にはBarclays在籍中から運営していたオンラインサロン「東京インベストメント倶楽部」で「北京のビジネスパートナーが中国のSINA(新浪)経由で日本の不動産の販促を行っている」という報告を行っている。同年2月には「某企業」の監査役に就任、10月には電子機器メーカーの経営に携わっているらしき発言をしている。こういったことが2代目Revatron設立のエピソードにどう繋がるのかさっぱり分からない。

2011年6月の2代目Revatron設立の2日後には香港で雷強(香港)控股有限公司という会社が設立されている。英名は「REVATRON (HONG KONG) HOLDING CO., LIMITED」で、IRSからの税務調査が始まったという2015年に解散している。后健慈氏や徐秀瑩氏との関わりは不明だが、同年2月に深田氏はブログで「知り合いの女社長から香港でジョイントベンチャーを設立して中国のベンチャーキャピタルから投資を受けたいと相談を受けた」という話を書いている。

深田氏はいつから事件に「巻き込まれて」いたのだろうか。この事件にはまだ語られていない出来事があるのではないだろうか。徐秀瑩氏以外にもまだ語られていない主要人物がいるのではないだろうか。それとも深田氏自身も事件の全容を把握し切れていないのだろうか。藤井氏は深田氏に対する最終通達のなかで次のように呼びかけている。
 もういい加減、ウソにウソを重ね塗りするのをやめて、少しは誠意のある対応をしたらどうですか!?あなたは元旦那含めて、あなたの周りの今までお世話になった方々に対して失礼すぎることをしていますよ!
 あなたは今までは数年間はジェイソンさんに洗脳されて悪いことをしてきたかもしれません。ジェイソンさんに洗脳されて悪いことをした分については、私はあなたを咎めるつもりはありませんでした。しかし、今年に入って、ジェイソンさんが去った今でもあなたは同じ過ちを繰り返しています。あなたは自分の意思でやっているのでしょうか?
深田氏は《事件番号:平成26年ワ2779》で「ソースコードの入ったUSBメモリをCTOが藤井氏に渡した」と主張したが、当の后健慈氏から「USBメモリを渡した」という供述は提出されなかった。JSF事件についても后健慈氏は深田氏に自身の主張を代弁させているようだが、その内容は二転三転し、満を持して公開された「証拠資料」もどちらかといえば深田氏にとって不利にはたらく内容のものだった。

こういったことから「后健慈氏に洗脳されているのではないか、騙されているのではないか」と深田氏の身を案じる声があるようだが、その後も后健慈氏の後任として米TekliumのCEOに就任しているようであるからビジネスパートナーとして良好な関係にあるように思える。(藤井氏にとっては大学時代の旧友であり、恩のある元上司の元妻ということであるから、色々と思うところがあるのかもしれないが)
藤井一良@fujikazu7
先日、WiLLから私宛に取材の依頼がありましたが、
WiLLは取材依頼後も雑誌やネット媒体でデマを吹聴しており、
全く誠意が感じられないので、取材をお断りさせていただきました。
その取材お断りメールを添付します。
もちろん、返信はありません。無視されました。

では「F35のチップソリューションを設計した」技術者を擁し、「コンピュータ設計、チップ・ソリューション、AI高速処理設計を国内の大手企業に提供している」企業としてRevatronの名を広め、係争中の裁判や一連の騒動について「ファーウェイからスパイ被害を受けている」という深田氏の主張だけを無批判に取り上げるなどしてきたWAC・WiLLはこの事件をどこまで把握しているのだろうか。

今なおネット上で「Revatronから軍事技術を盗んだスパイを告発したら名誉毀損の取り調べを受けた」と訴え続けている深田氏の「冤罪」を信じて、取り調べを行ったとされる牛込署に対して電話抗議を行ったり担当の刑事(SNSや動画などで深田氏によって名前が明かされている)を探し出そうとしたりする動きも出ているようだが、こうした事態をどのように受け止めているのだろうか。

WAC・WiLLに対して思うことは背乗りスパイ疑惑事件の抄録でも書いたが、こうして他のいくつかの騒動の対する態度を見ても、やはりこの事件をショービジネスか何かとしか見ていないような印象を受ける。十分な裏取りもせずに事件の断片を取り上げて「敵対勢力の脅威だ」と視聴読者を煽り、むやみやたらに騒ぎを大きくしただけで、果たして何か少しでも事件の解決につながるようなことをしただろうか。

たとえWACが「名誉毀損で起訴された」、「数十億ドルの脱税を疑われた」、「国際詐欺集団の詐欺師として刑事告訴された」と自ら公言しながらそれらを「秘密結社の陰謀」によるものと断じ、潔白を訴えて司法や警察、政府と戦おうという深田氏の姿にある種の正義を見出したのだとしても、ジャーナリズムや言論の自由を標榜してさえいれば立証責任を負わずに誰かを裁くことができるというわけではないだろう。

本稿では一部しか取り上げることができなかったが、この事件では多数の人物・組織が十分な根拠も示されないまま秘密結社の構成員やその協力者として疑いをかけられている。かけられている疑いの内容も「インサイダー取引を行った」、「暗殺部隊が動く」、「給食に麻薬を入れるのに加担している」、「証人を殺害した」、「横須賀基地を狙って核テロを計画している」など、看過できないものが少なくない。

WAC以外にもこの事件について取り上げたメディアには影響力に伴う責任があるのではないだろうか。深田氏は「被害者なのに警察にも相手にされず、政治からも無視された」と助けを求めているようだが、親交のある議員や言論人はこのまま事件について沈黙を続けるのだろうか。事件の真相が明らかになることを切に願っている。

【参考】
rescue_fujii – Medium

おわりに

筆者がこの事件の検証に関わるきっかけとなった出来事については他の抄録ですでに書いた通りである。本稿ではその出来事を「新型コロナウイルス騒動」として取り上げた。筆者もまた深田氏から「中国五毛党と連携する台湾のネット言論兵」といわれのない中傷を受けた1人であり、深田氏に対する心証は決して良いものとは言えないが、できる限りそうした自分の心情から距離を置いて事件の情報を整理した。

この長い抄録を辛抱強く最後まで読まれた方であれば、本稿が何らかの政治的なメッセージを意図したものではなく、あくまでこの事件に関する深田氏の発言の正確性および妥当性を検証したものであることはお分かりいただけるかと思う。筆者の関心は国際関係や政治経済ではなくこの事件の真相にある。「真相」というと何か大層なものに聞こえるのかもしれないが、「事実は何であるか」程度のことである。

この事件の検証を試みることさえ「敵対勢力からの攻撃」とみなして事実関係を軽視する向きがあるのは、当事者によってあたかも事件が何らかの党派対立と関わりがあるかのように語られ、さらにその言説がとりわけ党派性の強い主張を行う傾向のあるWAC・WiLLによって担保されていることが大きな原因なのだと思われるが、実はこの事件の争点はそうした対立のなかにはなく、おそらくは事実関係に反証ができるほどの解釈の余地もほとんど無いのではないだろうか。

保証金の返還をめぐる訴訟は2020年6月の期日が取り消され、同年末時点で次回期日も未定だという。裁判が始まってから約6年後にWiLLが提示してみせた「Revatronから技術を盗んで倒産させたファーウェイの背乗りスパイの証拠」は、すでに何度か述べたように、公開の場でのやり取りで深田氏の誤解であることが判明しているが、反証の体をなさない支離滅裂な「言い分」によって有耶無耶にされ、2020年12月現在も既成事実化ともいうべき事態が進行している。

WiLL増刊号のチャンネル登録者数は23万人(2020年)、『月刊WiLL』の発行部数は8万部(2018年)、メインの読者年齢は50~60代という情報もある。どれだけの方がこの抄録の存在に気付き、目を通すのかは分からないが、筆者のように訳も分からないまま事件に巻き込まれた方たちのためにも検証の記録を書き残しておくことにした。事件と真摯に向き合う方たちの事実探求に資するものとなれば幸いである。

最後に改めて参考サイトをいくつか紹介して筆を置くことにする。

1,000万円分割返済遅延時のやり取り内容(書き起こし)
藤井氏公認で別サイトで公開されていた内容と同じもの。音声データも公開されている。裁判資料として提出されているが、深田氏は自著『米中AI戦争の真実』(育鵬社)で捏造を主張している。

事実を整える:レバトロン関連訴訟の内容まとめ
日本での訴訟の情報が整理されている。自身が被告の裁判は延期し続けているが、自身が原告の裁判には出廷しているようである。

ZF:深田事件の考察一覧
技術・権利面からの秀逸な検証記事。本稿でも取り上げたRevatronの顧客を名乗る人物のコメントは「深田さんのお話の疑念」から確認できる。

さんそんチャンネル:深田萌絵さん10年裁判への道
藤井氏に対する技術詐取の訴えが棄却された裁判の判決文がブログで公開されており、Revatronとの業務提携の契約内容も分かる。

栗ティーク21のブログ:深田萌絵氏の妄言を検証する(①~⑤)
背乗り主張の検証。深田氏は「中国残留孤児」、「死後婚姻」と虚偽を指摘される度に根拠を二転三転させている。「背乗り主張が認められれば保証金返還訴訟を回避できる」と考えているようなので、なりふり構わずということなのだろうか。


以下はtogetterのまとめ。

衛星ハッキング(デマ)を目撃した深田萌絵に関わった産経新聞とFACTAの失態
自分たちでメディアに情報提供を行い、それを裁判で証拠資料として提出。記事にしたのは大学時代の恩師だったという。

深田萌絵さんによる三菱東京UFJ銀行への誹謗中傷
控訴審で敗訴後に「勝訴したが返還してこない」と主張。ブログでは同銀行支店長の昇進に疑惑があるとも主張している。

深田萌絵さんの創作スパイ話が雑すぎて・・・
深田氏と藤井氏の共通の知人による証言。国連スピーチ妨害疑惑なども杉田水脈氏やGAHTの証言が望まれる。

「謝長廷駐日台湾代表の発言」にソースが見当たらない件
本稿で取り上げたのは、あくまでこういった事例の一部に過ぎないということを強調しておく。

深田萌絵(浅田麻衣子)さんの会社関係を検証しました
深田氏の発言やプレスリリースを見ても「何をしているのかよく分からない会社」という印象だが、株主との関係は良好であるらしい。

テンセントと戦略的パートナーシップ契約を締結したRevatronの目的は?
プレスリリース関係の疑念の1つ。それにしても后健慈氏はどのようにパネルディスカッションに参加したのだろうか。

深田萌絵(=浅田麻衣子)のとある日本人家族への誹謗中傷
中国残留邦人の祖父がそうだったように、自分も深田氏からスパイ呼ばわりされている。自分の代で終わりにしたい、と藤井氏。背乗りは藤井氏が誹謗中傷として被害を訴えているうちの1つでしかなく、藤井氏の妻に対するものもある。

#深田萌絵(#浅田麻衣子)さんへの裁判レポート
裁判を傍聴された方のツイートまとめ。深田氏からストーカーの疑いをかけられ、裁判開廷中に盗撮されたとのこと。今後傍聴される方は注意されたい。

深田萌絵(浅田麻衣子)さんの台湾へのデマが酷くて
新型コロナウイルス騒動のまとめ。自国を誹謗されて下品な言葉で応酬する者もいたが、それがこの騒動のすべてではないし、ハイライトでもない。

新型コロナ対策に奮闘するIT業界をデマで侮辱
無償で開発された透明性の高いオープンソースのサイトやアプリに対してSNSで不安を煽って有料メルマガに誘導。ITに知見があるならコードの修正提案を出せばいいのではないか。

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